安曇幹線2号線の八王子峠越え(2日目)

ぶどう峠からの眺め

 満天の星空を楽しんだということは当然朝方は冷え込んだ。明け方の気温は3度。寒かった。起き出してまずは昨日楽しめなかった峠の風景を味わう。
 ぶどう峠は西側が大きく開けている。その開けた風景を一杯に使って西群馬幹線が横断している。西群馬幹線は南に見える御座山(おぐらさん)を越えて北相木村(きたあいきむら)の広い谷を渡る。そして上信国境の尾根にまた登っていく。上信国境の赤白鉄塔は十石峠からも見える103号だろう。そして、嬉しいことに安曇幹線2号線が西群馬幹線の下をくぐっていくのが見えるではないか。予想以上の大展望。
 計画では一旦峠を下りて栂峠(つがとうげ)経由で上信国境に出るつもりだった。でもこの大展望を見たら、ぶどう岳から稜線通しで行きたくなった。新三郎まで行きピストン。もしくは栂峠までいって県道を歩いて戻るか。時間次第かな。

写真:「ぶどう峠から見る西群馬幹線と安曇幹線2号線の交差 西群馬幹線105号、安曇幹線2号線 193 191号」へリンク
ぶどう峠から見る西群馬幹線と安曇幹線2号線の交差 西群馬幹線105号、安曇幹線2号線 193 191号
写真:「西群馬幹線103号」へリンク
西群馬幹線103号

北相木の4本カテナリー

 7時過ぎにぶどう峠を出る。最初は笹がかぶった踏み分け道。そこを過ぎ露岩を越えると展望のよいピークに出る。西群馬幹線、安曇幹線2号線、神流川線がよく見える。すばらしい。目の前の西群馬幹線は4本でひとつのカテナリー曲線を描いて広い北相木村の谷を渡っている。すごいですねぇ。「びよーーん」ってやってますね。

写真:「4本カテナリーの西群馬幹線、北相木村越え(左から108、107、106、105号)」へリンク
4本カテナリーの西群馬幹線、北相木村越え(左から108、107、106、105号)
写真:「御座山を越える西群馬幹線(西群馬幹線114、113、112、111、110、109、108、107号)」へリンク
御座山を越える西群馬幹線(西群馬幹線114、113、112、111、110、109、108、107号)


 次の岩ピーク。ここも眺望がよいがまだぶどう岳ではないようだ。直下に安曇幹線がマムシ岳を横切ってくる姿、そして神流川線がこちらにやってくる姿がよく見える。素晴らしいでも逆光だなぁ。バックは双子山から両神山。うーん山だらけだ。冬場の午後に来たら素晴らしい写真が撮れそうだが…
 神流川線は思ったよりもジグザグと尾根を越えている。一番遠くにかすかに見えるのは6号かな。ここで尾根を越えている。尾根の向こうは上野ダムの谷だろうか。
 安曇幹線2号線はマムシ岳の中腹をトラバースしてやってくる。マムシ岳は三角点もあり地理院地図にも名称の載る山なのだが、ここから見ると山というよりは、上信国境尾根から三峡へと続く大きな尾根という感じだ。(Webで写真を見ると結構すごい岩峰だ。西上州の藪岩マニアにはたまらない山なんだろう。)

写真:「神流川線12、11、10、9…号とマムシ岳を登る安曇幹線2号線(201、202、203…号)ちょっとピンぼけ_(._.)_」へリンク
神流川線12、11、10、9…号とマムシ岳を登る安曇幹線2号線(200、201、202、203…号)ちょっとピンぼけ_(._.)_

上野村の送電路たち

 マムシ岳を登る安曇幹線2号線を見ながら休憩する。


 ここ何年か群馬県上野村の数代にわたる送電ルートを見てきた。上野村の送電路は黒部幹線、安曇幹線1号線、安曇幹線2号線そして最新の西群馬幹線と時代をまたいで4路線がある。すべてできた当時は最新の幹線だった、ここは電気を運ぶ重要街道なのだ。そしてそれぞれの年代の送電路ルートが興味深い。

写真:「上野村、上信国境付近の送電ルート」へリンク
上野村、上信国境付近の送電ルート
写真:「上野村、上信国境付近の送電ルートイメージ(カシミール3Dで作成)」へリンク
上野村、上信国境付近の送電ルートイメージ(カシミール3Dで作成)


 上野村で一番古い黒部幹線は昭和2年に建設された。このルートは旧・十石峠道をなぞる。現在でいえばだいたい矢弓沢林道沿いだ。この建設では村人が動員され送電ケーブルなどを運んだという話を地元の人から聞いた。牛や馬、そして人間の背がすべての資材を運んだのだろうか。
 次に古い安曇幹線1号線は昭和44年頃の建設。こちらは黒川の北尾根上を登る。黒川は国道299号のルートだ。このルートも登山コースといってもよいほど人間用のルートに近い。
 建設された頃にはすでに尾根近くまで林道が通っていたはずだ。安曇幹線1号線の191号の近くに黒川隧道という林道のトンネルがある。このトンネルは昭和28年の竣工だ(現在は入口が埋まってしまっているし林道も廃道状態)。林道は尾根に沿って上信国境まで延びている。ここまで荷揚げできれば鉄塔まではあと少しだ。

写真:「山中に眠る黒川隧道(銘板には「昭和28年12月竣工」とある、2013年4月撮影)」へリンク
山中に眠る黒川隧道(銘板には「昭和28年12月竣工」とある、2013年4月撮影)


 それから10年数たった昭和56年年の安曇幹線2号線は神流川の南側をやってきて中ノ沢、日向沢とたどり、捨てられたかつての峠を越える。これが今眺めているマムシ岳ルート、建設機材は進展したのだろうが、やはりこれも人間の道をたどっている。


 技術や輸送手段の進展は今までは建設不能なルートを可能にする。でも私は人間のスケールで地勢に従ったルートがやはり好きだ。そして人間のスケールを越えた自然の形状に出会った時に、それを克服すべくさまざまな工夫が編み出される。安曇幹線1号線の4連耐張鉄塔や、黒部幹線の567号から568、569号への長径間を見て感動するのは、そんな人間の挑戦が分かりやすく形となって目前にあるからなのだと思う。

写真:「黒部幹線の長径間 567〜568〜569号(2013年10月撮影)」へリンク
黒部幹線の長径間 567〜568〜569号(2013年10月撮影)
写真:「4連碍子の安曇幹線1号線201号(2011年5月撮影)」へリンク
4連碍子の安曇幹線1号線201号(2011年5月撮影)

西群馬幹線114号のものがたり

 さて最新の西群馬幹線(平成4年)はどうだろう。この辺りの西群馬幹線は上信国境の稜線沿いに進み、北相木村の谷を越えると御座山の北尾根を登り東尾根を乗越す。やはり地勢に従ったルートとも言える。
 でも100メートルを超える鉄塔は、多少の地形の凹凸を軽々と越えて行く。径間は平均すると安曇幹線2号線の倍くらいは長いだろう。尾根のピークから遙か彼方のピークにダイナミックに線をつなぐ。
 他の路線が苦労して山をのぼり谷を遡るように感じるのに対し、西群馬幹線は巨人が大股で山を乗り越える感じだ。人間的スケールの鉄塔は分かりやすいのだが、西群馬幹線のような巨大スケールの鉄塔になると、凄すぎて親しみが湧かない。でもそれを建てているのもまた人間なのだ。


 西群馬幹線が北相木の谷から御座山目指し進む。西群馬幹線の巨人も大きいが山はそれ以上に大きい。谷底から4本で北尾根の小ピークへ。小ピークの赤白鉄塔109号から北尾根の斜面をトラバースしながら登っていく。大きな巨人の歩幅をもってしてもトラバースすること5本、ついに東尾根に到達し向こう側に消えていく。そこに立つのが西群馬幹線114号だ。

写真:「御座山を越える西群馬幹線(106〜114号)」へリンク
御座山を越える西群馬幹線(111〜114号)
写真:「西群馬幹線114号」へリンク
西群馬幹線114号


 この肩の標高は1950メートル。日本における送電鉄塔の標高としてはとても高い。私の訪れた鉄塔で標高がもっとも高いのは只見幹線の尾瀬越え鉄塔で1910メートルだ。根本でも数10メートル高いが鉄塔の高さは只見幹線より50メートル以上高い。鉄塔の上部は2050メートル以上ということになる。
 ここに鉄塔を建設し、送電線を張った男達の物語はNHKプロジェクトXに記録されている。(→プロジェクトX 挑戦者たち 「100万ボルトの送電線 決死の空中戦に挑む」


 標高2000メートルでの鉄塔建設、それも100万ボルト設計8導体の鉄塔だ。プロジェクトXでは基礎工事や鉄塔組立についてはあまり触れられていないが、緊線とスペーサーの取り付けに格闘する電工屋さんの姿が詳しく描かれている。1連40個の4連耐張碍子のつり上げ、8導体送電ケーブルのつなぎ留め、自走式宙乗りゴンドラを使ったスペーサー取り付け工事。その最中に起こった天気の急変に送電ケーブルを歩き渡り助太刀に向かう熟練電工。あの遥かな上空で豆粒のような人間がすべてをやってのけたのか。


 あの鉄塔に行ってみたい。帰ってから登山道を調べて見た。鉄塔が立つのは御座山の東尾根。御座山は比較的有名な山で多くの人が登り、コースも整備されているようだ。でもこの東尾根にはコースはない。ごくわずかな人によるアタックが行われている。地形図には破線(歩道)が描かれているが道はないらしい。araigengaさんの山行記録では


「御座山から東尾根、P1974まで全く道なし、P1974から相木川への下りも道なし、獣道を下ると沢筋に降りることができた。」(ヤマコレの山行記録からhttp://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-62536.html?viewmode=pc

とある。
 別の情報によると山の南側からは林道を使えば鉄塔直下まで行けるようだ。鉄塔建設のために作られた林道だろうか。林道にはゲートがあるらしいのでてくてく2時間ほど歩くことになる。林道経由だと確実だが御座山の頂上にも行ってみたいし迷うところだ。

八王子峠

 閑話休題。道を先に進もう。ぶどう峠からふたつの岩ピークを過ぎると道は快適な山道になる。ぶどう岳は木に囲まれ眺望はなし。通過する。しばらくすると前方に烏帽子と鋼管鉄塔がちらちらと見えてくる。烏帽子の安曇幹線2号線と鋼管の神流川線が上信国境を越える地点だ。安曇幹線と神流川線はここで交差している。だから安曇幹線2号線は帽子が赤い。山の中で赤いチロル帽、ちょっとおしゃれだ。

写真:「神流川線15号と安曇幹線2号線197号」へリンク
神流川線15号と安曇幹線2号線197号


 2号線がマムシ岳山腹を登り、日向沢の源頭で遂に上信国境を越えるこの鞍部は、長野側からは北相木村の木次原から東にのびる広く緩やかな沢の源頭に当たる。
 この鞍部、現在は道も名前も失われているが、かつて峠道が通っていたという。名前は「ハッツォウジ峠」とか「ハツオウジ峠(八王子峠)」と伝えられ、戦前の五万分ノ一陸測図『十石峠』にも破線道が描かれているらしい。だから安曇幹線2号線の上信国境越え地点は八王子峠と呼ぶことにした。(詳しくは、ねくらハイカー氏の『ねくらハイキング』 http://www.k2.dion.ne.jp/~tnhc/bomamu/bomamu.html 参照)


 八王子峠の鞍部に入ると西側の風景が大きく開ける。安曇幹線2号線が西に進んでいく、神流川線も並んで進む。そして目の前を西群馬幹線が横切って、北相木村の谷を越え御座山へと登って行く。スカイラインには残雪が残る八ヶ岳が白く光る。いったい何本の鉄塔が見えているのだろうか。
 西群馬幹線は上信国境に立つ赤白の103号から御座山越えの114号、安曇幹線2号線は上信国境越えの197号から西群馬幹線をくぐって185号まで見えているようだ。神流川線は今いる15号から進み西群馬幹線合流の19号まで。計30本の鉄塔が目の前に広がっている。
 鉄塔の内容がまた凄い。50万ボルト送電の古き立役者―安曇幹線と100万ボルト送電へ挑戦した西群馬幹線。そして地下500メートル、全部完成すれば世界最大級282万kWの揚水式発電所神流川発電所からやってくる神流川線。電力輸送の立役者たちが一堂に揃っているのだ。

写真:「八王子峠からの眺め(西群馬幹線108、107、106、105号)」へリンク
八王子峠からの眺め(西群馬幹線108、107、106、105号)
写真:「八王子峠からの眺め(安曇幹線2号線196、195、194、193号 西群馬幹線105号)」へリンク
八王子峠からの眺め(安曇幹線2号線196、195、194、193号 西群馬幹線105号)


 目の前の信州側斜面には神流川線15号の鋼管鉄塔が立っている。急斜面に片継脚、88メートルだ。渋い黒い肌(酸化皮膜のようだ)をしている。何と碍子は茶色だ。
 その先少し高いところに安曇幹線2号線197号。これが安曇幹線2号線の上信国境越えの鉄塔だ。2連耐張のアングル鉄塔、高さは35メートル。安曇幹線2号線としては少し低い鉄塔で、神流川線や西群馬幹線の巨人と比べると赤ん坊のような大きさだ。
 安曇幹線2号線は狭い歩幅で信州へと下り4本目の193号で西群馬幹線をくぐる。その先でまた山を越えて見えなくなっている。地図で見ると北相木村の三滝という辺りだ。佐久の街道まではまだまだ長い山越えが続いている。

新三郎

 さて目的の安曇幹線2号線までたどり着いた。この先どうするか。最初のプランではここで引き返し、ぶどう峠まで戻る計画だった。でもまだ時間は早い。新三郎まで登りたいな。新三郎から戻るのもありかな。いや新三郎まで行けば栂峠がすぐだ。栂峠の先には西群馬幹線の103号が待っている。栂峠から林道を下り、県道をぶどう峠まで登り返すのは辛いが、時間的には十分だ。
 ということで稜線をそのまま進むことにした。1時間くらいで新三郎に着く。真下に安曇幹線2号線と西群馬幹線との交差が見える。これは面白い。鉄塔の大きさが本当に違うなぁ。初期の50万ボルト設計と現在の100万ボルト設計の違いがこんなにあるとは。
 神流川線の最終鉄塔19号と西群馬幹線への接続点も見えるのだが、木の枝がじゃまで写真が撮れない。残念だ。

写真:「安曇幹線と西群馬幹線の交差点(安曇幹線2号線193号 神流川線18号 西群馬幹線105号)」へリンク
安曇幹線と西群馬幹線の交差点(安曇幹線2号線193号 神流川線18号 西群馬幹線105号)

ルートミス

 大風景を眺めながら昼飯を食べ、栂峠に向けて出発。風景に酔ってしまったか、ここで下りる方向を間違えたようだ。主尾根は頂上で北に直角に曲がっているのだが、私はそのまま北西の尾根に入ったようだ。
 稜線を進むと藪の痩せ尾根。構わず進む。露岩が前を塞ぎ左から巻こうとして行き詰まる。10メートルくらいの崖。地図読みには少しは自信があるのだが、肝心なところで地図を見ていない。見ていなければ自信もくそもない。念のためGPSも持っているが、確認しなければこれも宝の持ち腐れだ。


 ああたいへんなことになっちゃいました。引き返すのが正解なのだが、途中の藪と痩せ尾根が嫌で、無理やり補助ロープを使って谷底に下りた。
 この谷の1本北の谷を下りると林道に出られそうだ。幸いなことに谷は広く緩やかだ。途中で作業道らしき踏み跡を発見しそれを伝って栂峠林道まで下りられた。幸いだったがやはり時間は大幅に食ってしまったし、ごろごろの岩道を下りたせいで疲れた。やはり引き返すのが正解だったなぁ。(良い子も悪い子もまねしないでね、<1>ぜったいに引き返すこと、<2>谷筋を下りないこと、これ山のお約束です)

神流川線と西群馬幹線の合流

 何とか生還した目の前が何と神流川線と西群馬幹線の合流地点だった。これは鉄塔の神様のお導きかな。
 西群馬幹線の104号の隣に神流川線の最終鉄塔19号が立っている。19号は話に聞く三角鉄塔であることを確認。本当に3本脚の鉄塔があるんだ。19号からジャンパが西群馬幹線に延びている。今は1回線だから簡単に繋いでいるが、2回線になったらどうするんだろう。上下振りわけとか考えなきゃならないだろうに。

写真:「西群馬幹線と神流川線の合流(神流川線19号 西群馬幹線104号)」へリンク
西群馬幹線と神流川線の合流(神流川線19号 西群馬幹線104号)


 ゆっくり見たかったが時間を食ってしまったので余裕がない。日のあるうちにぶどう峠に戻りたい。今すぐ戻ってぎりぎりだろう。林道から数枚写真を撮っただけで歩き始める。何時に着くかなぁ。18:00までには着くと思うが。


 県道に出たところはきれいな湖だった。加和志湖という砂防ダム湖のようだ。この横を西群馬幹線が登っていく。県道よりから106、107、108と山を登り109号の赤白鉄塔まで見える。

写真:「西群馬幹線106号から109号」へリンク
西群馬幹線106号から109号


 最後にいい景色を見た。これで元気を取り戻し、てくてくぶどう峠道を歩く。木次原の集落を過ぎ、「長者の森」への分岐。ここから登りであと2キロか。
 18時にぶどう峠に着いた。テントを急いで張る。今日はまいりましたねぇ。疲れたので夕食は「赤いきつね」、後はパンとチーズでも齧ろう。「赤いきつね」を食べていたら暗い中、自転車のお兄ちゃんが登って来た。寒そうで可愛そう。でも「赤いきつね」はあげない。水を補給するのを忘れていたので、水がぎりぎりなのだ。勘弁ね。



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続く

安曇幹線2号線の八王子峠越え(1日目)

 連休です。安曇幹線にやってきた。昨年の10月以来のご無沙汰だ。高速は大渋滞だろうから下道を行こうと昼過ぎに出る。青梅街道をトコトコ走って青梅変電所、岩藏街道から名栗川、山伏峠。ここまでは順調だ。
 国道299へ出たところで渋滞。もう午後も遅いから下りの渋滞が解消しているだろうと思ったが甘かった。
 彩甲斐街道(140号)まで渋滞。秩父の市街を抜ければさすがに渋滞はない。遅くなってしまったが快適に飛ばす。小鹿野で安曇幹線と合流、新所沢開閉所を過ぎて志賀坂峠を越えて神流川。5時半過ぎに上野村のふれあい館に着いた。


 今回は安曇幹線2号線の上信国境越えの調査。安曇幹線の1号線と2号線は上野村から蓼科の山麓までとても離れた経路を通るのだ。安曇幹線1号線が十石峠の北側の尾根を越えて佐久穂町十石峠道(国道299号)のルートをたどるのに対し、2号線は南へと向かい、マムシ岳の山麓を横切り、ぶどう岳と新三郎の間を越えて北相木(あいき)村から小海町に抜ける。
 だから今日はぶどう峠で泊まる予定。何とか暗くなる前には着きたいが…


 県道上野小海線に入る。この道は上野村と信州を結ぶ2本の道のひとつ。もうひとつの十石峠は酷(国)道だが、ぶどう峠を越えるこの県道も狭く、きつく、長い道だ。私は「ぶどう峠道」と呼んでいる。薄暗い山道、頭上を鉄塔が何本も通り過ぎる。路面を注視しないと危ないがわくわくと鉄塔をチラ見する。これは期待が持てそうだ。峠に着いたのはほんのりと辺りが見える時間だった。峠の横の駐車スペースの奥に草付きの場所がある。急いでテントを張った。とても快適。月は三日月、星がとてもきれい。
 お湯が沸いた飯だ。

写真:「ぶどう峠(2014/5/4撮影)」へリンク
ぶどう峠(2014/5/4撮影)

続く

鉄塔ウォーク 2014春

 近くに鉄塔好きがいると、だんだん回りの人も鉄塔が目に入って来てしまう。これは鉄塔ウィルスという病原体が伝染するからです。


 私の回りも例外ではなく、仕事関係の方々からいつも文句を言われていました。そして遂に鉄塔のプレゼンをやれという話になり、さらには鉄塔を見に連れて行けということになりました。
 ということで業界限定の鉄塔ウォークを開催しました。場所は南多摩線、今年のはじめから通いつめた地域です。ここならピクニック気分で鉄塔を回れるのでおじさん、おばさん(前期高齢者もいましたが…一応)ばかりの集団でも楽しくやれるというもくろみです。

 当日、参加者に配布したPDFをアップしました。コースはなかなかよかったので、来春には一般公募でここに行きたいと考えています。



 それとは別に秋になったら、鉄塔ウォークを開催しようかなと思っています。コースとしては街中の鉄塔で江戸川変電所周辺が面白いかな。


写真:「鉄塔ウォークパンフ(PDF)」へリンク
鉄塔ウォークパンフ(PDF)
写真:「南多摩線31号で」へリンク
南多摩線31号で

南多摩線完全踏破

 明日は鉄塔ウォーク。それまでに南多摩線をちゃんと済ませたくてやってきた。尾根幹線を抜けベビーザらスから南へ折れる。すると目の前に赤白鉄塔が2本。
 コストコなどに来るたびに見てきた赤白鉄塔なのだが、実は根本には行っていない。これが今日の課題で南多摩線のラストの鉄塔たちだ。

写真:「南多摩線14号15号」へリンク
南多摩線14号15号


 まずは15号から。多摩境駅前道路の外れ、自動車道沿いに立つ。赤白、鋼管の重角度鉄塔。とても目立つがっしりとした鉄塔だ。でも鉄塔札も番号看板も見当たらない。たぶん15号なのだが。隣には新しそうなマンション。たぶんそちら側に鉄塔札や番号看板があるのだろう。
 番号看板は道から見える側に付けるのが原則だ。現在の自動車道もマンションもつい最近できたはずだ。この間までこの辺りは畑か林か。かつてはマンション側に細い道でもあったに違いない。(後で塔頂標で15号を確認した)。

写真:「南多摩線15号」へリンク
南多摩線15号
写真:「南多摩線15号」へリンク
南多摩線15号


 15号から少し老番側に入ってみた。もうそこは街外れ。若い声が飛び交うグランドの先、林の上から16号のI吊りが顔を出す。コストコカインズホーム、スポーツゼビオ、ベビーザらスと集客力抜群の大規模店舗がならび、いつも駐車場待ちの車で渋滞している多摩境。そのわずか先、16号の根本にはあんな山里が残っている。面白いところだ。

写真:「南多摩線16号」へリンク
南多摩線16号


 さあ最後の1本。14号をゲットしよう。14号も赤白鉄塔だがこんどはアングル鉄塔。軽角度鉄塔ということもあり、15号よりは軽快でおしゃれな感じがする。
 この鉄塔には送電線を引き下げられるようにテラスが付いているのだが、現在は利用されていない。近場に同じように引き下ろし鉄塔の構造を持ちながら線を下ろしていない長沼線11号がある。機会があったら地中線のマンホールでも漁ってみようかな。

写真:「南多摩線14号」へリンク
南多摩線14号


 隣の13号まで立ち寄る。この先南多摩線は直角に折れて丘を下る。そして長沼線、南多摩線、渕野辺線が橋本変電所まで3列で大行進する。その辺りのことは2009年6月27日7月4日12日の日記に書いてある。また行くこともあるだろうか、どちらにしても今回はここでお終いにしよう。
 お墓を建てたのは2006年のこと。初めて多摩丘陵の空を南多摩線が渡っていくのを見てから8年も経つ。ちゃんと全線見られてよかった。

写真:「最初にお墓から撮った南多摩線(2006年)」へリンク
最初にお墓から撮った南多摩線(2006年)

多摩のよこやま 目次

 今年のはじめから歩き始めた南多摩線関連の記事に「多摩のよこやま」のタグをつけました。
 以下がその一覧です。

sarumaruhideki:20120320">2012-03-20 南多摩線とフットパス:初めて奈良ばいの谷戸を歩いた記録です
sarumaruhideki:20140111">2014-01-11 小山田線(図師から日大三高まで):正月にまず小山田線から歩き始めました
sarumaruhideki:20140112">2014-01-12 鶴川線(鶴川変電所から野津田公園まで):もうひとつの支線、鶴川線を開始しました。
sarumaruhideki:20140113">2014-01-13 鶴川線(野津田公園から万松寺の谷戸、そして‘ならばい’谷戸):鶴川線の2回目です。
sarumaruhideki:20140119">2014-01-19 南多摩線(小山田公園から‘ならばい’谷戸へ、そして落ち穂拾い):本命である南多摩線をたどり始めました。鶴川線と小山田線の抜かした鉄塔をフォローしました。
sarumaruhideki:20140308">2014-03-08 南多摩線(小野路〜別府):小野路宿から川崎街道の間の区間です。
sarumaruhideki:20140322">2014-03-22 南多摩線(別所から西東京変電所区間):川崎街道から西東京変電所の区間南多摩線33号をゲットしました。
sarumaruhideki:20140323">2014-03-23 花の南多摩線:唐木田から黒川まで復習であるきました。南多摩線34号もゲットです。
sarumaruhideki:20140412">2014-04-12 ちょこっと南多摩線:小山田の方(西)に向かって調査をはじめました。
sarumaruhideki:20140412">2014-04-12 南多摩線(小山田〜多摩境):多摩境の手前まで小山田の山里を歩いています。
sarumaruhideki:20140426">2014-04-26 南多摩線完全踏破:最後に残った多摩境の赤白鉄塔2本を訪ねました。


「多摩のよこやま」というタグは付けていませんが以下に多摩境から橋本変電所までの南多摩線の様子を書いています。西に行こうプロジェクトで由木線をたどった時の記録です。

2009-06-27 尾根緑道から
2009-07-04 多摩境から橋本へ、3列縦隊、八ツ沢線!!
2009-07-12 鉄塔行進、3階建て鉄構、小さな鉄塔群

ちょこっと境‐八王子線

 菜種梅雨なのかな。天気が悪い。そして寒い。多摩境までバイクで行く予定だったが変更。電車で簡単に行けるところを探し南武線南多摩に来た。
 多摩川から桜ヶ丘線までの境‐八王子線(JR)はまだたどっていない。


 南多摩駅から南側へ出ると川崎街道沿いに早速重角度鉄塔。脚元に行くと「大丸線 1号」と書いてある。「境‐八王子線38号」の札もある。こちらはJRの送電路だ。多摩川を越えた先の競艇場からこちら側はJRと東電が鉄塔を共用している区間だ。

写真:「大丸線1号(境‐八王子線38号)」へリンク
大丸線1号(境‐八王子線38号)


 それにしても「1号」とはと隣を見るとテラス付きの引き下げ鉄塔が立っている。今度は東電が「南多摩水再生センター線1号」、JRは「境‐八王子線39号」だ。地中線の入口看板には「南多摩水再生センター線 南多摩水再生センター線No.1(鉄)〜稲6M」とある。「稲6M」は稲城変電所かなぁ。

写真:「南多摩水再生センター線1号(境‐八王子線39号)」へリンク
南多摩水再生センター線1号(境‐八王子線39号)


 南多摩水再生センター線を数本歩く。この先、川崎街道の南側は米軍の広い保養施設(多摩サービス補助施設)。ゴルフ場や乗馬施設などが尾根幹線までの広い区域を占めている。街道の北側は多摩川との間が、下水処理場(これが南多摩水再生センターだ)とゴルフ場になる。連光寺の街に抜けるまで川崎街道の左右に住宅がないという地域だ。
 そこを送電線も川崎街道を左右に縫いながら進んで行く。


 次の鉄塔は川崎街道が切り拓かれて取り残された高い小山の上に立っている。どうも近づけないようだ。今日は深追いしないことにしているので接近ができるかどうか不明。番号看板などは見えない。鉄塔札は見えたとしても判読不能だろう。

写真:「南多摩水再生センター線たぶん2号(境‐八王子線41号か40号)」へリンク
南多摩水再生センター線たぶん2号(境‐八王子線41号か40号)


 その次は下界に鉄塔が下りて来る。こんどは南多摩水再生センター線3号で境‐八王子線では42号となっている。そうすると前の小山の上の鉄塔は南多摩水再生センター線としては2号だが、境‐八王子線は41号なのか40号なのか。どちらにしてもここで1本飛ばしとなっている。今日は深追いしないが、ちょっと気になるなぁ。


 この先、上下振り分けやら魅力的な鉄塔があるがここで戻る。川崎街道から多摩川へ抜けてみた。多摩川の対岸に赤白鉄塔、そして下段ドラキュラの引き下げ鉄塔が見える。あそこが競艇場だろう。大丸線の番号は4、5号になるのかな。

写真:「大丸線4、5号?」へリンク
大丸線4、5号?


 こちら側の鉄塔も赤白鉄塔。大丸線の3号(境‐八王子線35号)だ。立地は工場内だが敷地際なので根本に近づける。


 今日はちょこっとの積もりなので次の南多摩駅の駅前美化鉄柱―大丸線2号(境‐八王子線36号)でお終い。
 南多摩駅は駅前に何もない。ただ広い駐車場があるだけだ。再開発中のようなので風景はそのうち一変するのだろうが、いまは広い空き地にポツンと美化鉄柱が立っている。根本にツルニチニチソウ青い花を一面に咲かしていた。
 米軍施設に下水処理場、工場、最後に駅前も再開発で空き地。車はさかんに通り過ぎるがほとんど人けのない散歩になった。

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大丸線2号(境‐八王子線36号)

南多摩線(小山田〜多摩境)

 昨日に引き続き南多摩線を回る。今日は多摩丘陵を抜けて多摩境まで行けるだろうか。
 昨日同様、小山田緑地の駐車場にバイクを止める。すぐ先に大泉寺。小山田氏の城址だということで、趣のある大きなお寺だ。
 善治ヶ谷(やと)に入る。昨日は無理矢理20号の尾根に登ったが今日は入り口を見つけた。人家に入る道と思い込んでいた道。そこから山道が分かれていた。軽自動車が1台ようやく通れる幅の道。ぬかるんで歩きづらい。


 20号を過ぎると道は送電路を離れどんどん北に進む。谷戸の向こう側に19号が見えるが、どんどん離れていく。どうも多摩丘陵の道は送電線沿いにはつかないようだ。

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南多摩線19号
写真:「古くからある道なのだろう。こんなお地蔵さんがいた。」へリンク
古くからある道なのだろう。こんなお地蔵さんがいた。


 大きな谷戸をすっかり遡り尾根幹線のそばまで迂回して今度は南に進む。風景は完全に山里モードだ。

写真:「南多摩線20号」へリンク
南多摩線20号


 そのまま尾根沿いに進むと19号に出る。道に面しているのだが、農場の柵があって根本には入れない。

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南多摩線19号


 19号を過ぎてすぐにお寺の上にでた。お墓が稜線まで登って来ている。眺めが良いのでお墓と鉄塔を見ながら食事にする。南多摩線の14号から18号までが見える。

写真:「小山田の街と南多摩線14、15、16、17号」へリンク
小山田の街と南多摩線14、15、16、17号


 ぽちぽち歩いて里に下り、小山田のバス停に向かう。今度は右手の山の上に見える18号だ。自動車道から花が咲き乱れる畑の道を登ると18号。

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南多摩線18号


 そのまま林の中に進む。少し先を下りると鶴見川の源流に出られるらしい。へぇ〜こんな近くに源流があるんだ。たしかに水がこんこんと湧いていた。

写真:「鶴見川の源流」へリンク
鶴見川の源流


 次の17号が目の前にある。どこから登るのかなぁ。この谷戸からも登る道がありそうだが、一旦小山田バス停まで戻り、尾根を行くことにする。
 地形図にある尾根沿いの道の入り口が分からない。尾根上の畑奥に道があったので、そこを進む。確かに道があるのだが竹が荒れ放題で大変。竹藪を抜けると道が少し良くなり、右から道が合流。わぁ今度は倒木で通せんぼ。という感じで大変だったが、おおむね快適に通れる。かつてはちゃんとした道だったようだ。


 17号は刈り払いされた気持ちのよい草地。すぐ横に山桜が咲いていた。
 17号からすぐに開けた畑地に出た。とてもきれいな山里風景だ。谷戸を詰めてこちらからアプローチするのが正解のようだ。正面に16号。これで多摩丘陵から多摩境の街に抜ける。今日最後の鉄塔だ。

写真:「南多摩線16号」へリンク
南多摩線16号


 再び山道に入り、舗装道路に出るところで左手に入る踏み分け道がある。その行き止まりに16号が立っていた。フェンスに囲まれているのは残念だが、I吊りの素朴な鉄塔だ。
 この先には15号14号の赤白鉄塔がふたつ。この2本を回れば南多摩線のすべての根本に行ったことになる。でもそこはもう多摩境の街中、まだ田舎の風景の中に浸っていたい。今日はここで戻ることにする。

 道を戻り谷沿いに小山田緑地管理センターまで歩く。野辺の花がきれいだ。ハナニラ、ツリガネスイセンタンポポホトケノザムスカリタビラコ、ハルジオン、スズラン、クサボケ、ナバナ…春爛漫の一日だ。

ちょこっと南多摩線

 遅くに南多摩線にやってきた。小山田緑地から西東京変電所区間は全部回ったので、こんどは西に向かう。
 今日はバイクをまじめに駐車場に入れた。それが裏目に出た。小山田緑地の駐車場は5時に閉まっちゃうんだ。それで20号の1本だけ見て帰ることにする。

写真:「善治ヶ谷の南多摩線21号」へリンク
善治ヶ谷の南多摩線21号


 善治ヶ谷に入る。右手が21号、左手の尾根上に立つ鉄塔が目指す20号だ。20号方面に進む、でも尾根に上がる道がよく分からない。谷からわずかに尾根上のところを直登。すると細いが立派な林道に出た。やはり道を間違えていたようだ。その先林道沿いにII吊りの20号があった。

写真:「南多摩線20号は木々に囲まれて立っている」へリンク
南多摩線20号は木々に囲まれて立っている


 帰り道。林道から下る道があったのでそこを下りてみる。途中の畑から20号がよく見えた。どうもコースからは外れているようだがこの風景みっけものだ。

写真:「南多摩線20号」へリンク
南多摩線20号


 花がきれいだ。ソメイヨシノは過ぎたが山桜とか水仙、オドリコソウ、白い八重のしだれ桜、タンポポポポンタにカラスノエンドウ…。春はいいなぁ。