尾瀬の只見幹線 福島側 2日目

電発峠

 早出したいと思いながらもやはり寝坊。それでも7時前にはキャンプ場を出発した。小淵沢田代へ向かう坂道。運動不足のためか直ぐに息が切れる。
 あれだけ大勢いたハイカーもこちらの方へは誰もやってこない。静かなブナ林を登ると小淵沢田代。花の時期は過ぎたようだ。ウメバチソウイワショウブの赤い実ぐらいしか見当たらない。小淵沢田代を過ぎ、荒れた山道を少し行くと電発峠へと出た。

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電発峠 只見幹線126号
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只見幹線竣工記念碑


 電発峠は標高1900メートル余り。樹林が広く切り拓かれ、そこを只見幹線が通り抜ける。一昨年来た時にはクマザサが覆い尽くしていたのだが、今年はそのクマザサも刈り払われ、一面茶色の広場になっていた。
 まずは群馬側126号まで歩いて眺望を楽しむ。126号は崖の上。すとんと落ちているので眺めが最高なのだ。手前には127号と128号、そして四郎山の西尾根を越えて行く只見幹線まで見渡せる。あの先は白根発電所の辺りになるのだろうか。

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126号からの眺望
逆光で写りが悪いので送電線ルートを赤線で示した
赤沢山肩の辺りが160号らしい。遠く左から右に下る青い稜線が赤城山の稜線、雲の向こうは秩父の赤久縄山辺りのようだ、赤城山の稜線には50万ボルト級の鉄塔が2基見える。(クリックすると拡大)


 電発峠中央に立つのは125号。2連耐張の頭でっかち鉄塔。そして北の端が124号。I吊りの端正な只見幹線が今日のルートの入り口だ。ここから七入まで高度差で900メートル下ることになる。
 小淵沢田代や電発峠で写真を撮るのに時間を使い、下り始めたのは9時になってしまった。

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只見幹線124号

七入に向けて下り始める

 124号を通り過ぎるとすぐに123、122が見えてくる。背の高いクマザサを刈り払った道が続く。クマザサ街道だ。下り始めてすぐに大型獣と思われるフンを発見。熊かしらん。見通しの悪いクマザサの中、嫌だなぁ。

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只見幹線123号と122号


 30分弱で123号。結界は小さめのI吊り。送電路はここから尾根を外れて谷に向かっていく。
 直ぐに122号。今度は2連耐張。この鉄塔はさっきより大きい。

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只見幹線122号(下から振り返った姿)


 谷を見下ろすと4本の鉄塔が見えている。121号が谷の手前中腹。120号は谷の下の方、ぐんと低くなっている。その先に尾根筋に1本、そしてまた尾根筋に1本あるが番号は見えない。

写真:「手前から只見幹線121、120、119、118号」へリンク
手前から只見幹線121、120、119、118号

 道は林の中に入り小さな沢をぴょんぴょん渡り。谷の斜面を登っていくと121号にでた。
 これは背高のっぽな鉄塔だ。結界も広い。どうも運動不足がたたっているようで疲れた。ここで小休止。
 遠くに見える119号の尾根がひとつの目安。あれを越えると一気に七入の本谷まで下りることになる。気持ちを励まして出発する。
 道は山の中に入り、沢を高巻く感じで小さな尾根を下る。すぐに尾根を外れ尾根の斜面を鉄塔に向かって急降下、120が見えてきた。

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只見幹線120号


 120は2連耐張。これも背の高い鉄塔だ。木に囲まれた草地に斜面に片継脚で立っている。電源開発の鉄塔には鉄塔の高さが記載されていないが、たぶん5、60メートルはあると思う。
 休みがてら鉄骨を計測する。主柱は150ミリ角の20ミリ厚。下部の斜材が130ミリ角、9ミリ厚だ。20ミリ厚ってのは頑丈だなぁ。

黒落沢を越えて

 送電線は黒落沢という谷を渡って一気にむこうの尾根まで行っている。巡視路は大きく谷を迂回する。谷底で小さな流れを渡る。谷の水で顔を洗ってリフレッシュ。
 谷をまいた道は尾根の斜面を九十九折りで登る。登り切ると一気に視界が晴れた。119号が先の下方に小さく見える。振り返ると120、121、122、123そして頂上の124まで見えるではないか。
 そして119号から最下点の120号を通過して121号まで。この3本できれいなカテナリー曲線を描いている。これはお見事だ。

写真:「手前から只見幹線120、121、122、123号」へリンク
手前から只見幹線120、121、122、123号
一番手前の120号は少し見づらい

 119号は尾根の上に片継ぎ脚のI吊り。かっこいい。かっこいいよこいつは。ちょうどお昼なので、送電線の絶景を棚しみながらゆっくり休むことにする。
 空を雲が流れていく。向かいの山は平らで、こんもりと森が包んでいる。いいところだよ。

写真:「只見幹線 119号」へリンク
只見幹線 119号

矢櫃平へ

 休んでいると一陣の風が吹いてきた。山の上を眺めるともうガスっている。どうやら天気が崩れ始めたようだ。涼しくなったのはいいのだが、時間的にはちょっとまずいなぁ。開けた谷を118号へ向かう。
 118号はちょっとした鞍部のようなところに立っている。軽角度で曲げて、その先はどんと谷が横切る。送電線はぐーんと下まで行って次の尾根の所に117号が見える。

写真:「只見幹線118号」へリンク
只見幹線118号


 道は何回か小さな谷を迂回。小さな流れを数回渡る。流れで少し口をすすぎ一息入れて、そこから登り返す。小1時間で117号へ到着。
 117号は2連耐張。七入からの本谷=実川の谷の斜面。片継脚で立っている。大きな結界、気持ちよい草地。休まない積もりが休んじゃった。もうバテバテ。機会があれば休んでいる。

写真:「只見幹線117号」へリンク
只見幹線117号


 先を見通すと平らな地形が見えてきた。矢櫃平だ。
 最初立てた計画ではこの矢櫃平でテント泊、もしくはエスケープルートを探して下山というものだった。
 今回は、エスケープしてもそのまままっすぐ進んでも距離的には大差ないということで、一気に七入に行く計画だ。
 でも矢櫃平から送電路沿いだと一山越えなきゃならない。これは結構なアルバイトだ。今日はどうも調子が悪すぎる。どうしようか迷いながら最後の下りを下りる。

写真:「只見幹線117号より116、115、114、113号」へリンク
只見幹線117号より116、115、114、113号


 3時少し前に116号到着。平らな地形、鉄塔はその南端、少し高いところにたっている。次の115号は矢櫃平の中央部分、そして平らなところが尽きて少し上に114号。そこから一気に小山を越えて113号が頂上に立つ。
 あの113号まで行けば沼田街道(といっても山道だが)に下りることができる。頑張るしかないかと思い始めたところで、115号手前に建物を発見した。

写真:「只見幹線116号」へリンク
只見幹線116号

電発小屋

写真:「No.115電発小屋」へリンク
No.115電発小屋


 道を逸れて建物に近づく。「只見幹線NO115山小屋」。電源開発の巡視小屋だ。波板葺きの2階建て。小さな建物ながら快適そうな感じだ。誰もいないし、カギが掛かっていて入れない。水を引いてあるのだろうか。小屋裏には水道用のホースがまとめてあったが、引かれたホースは見えない。


 小屋の周りにはテント程度は張れそうだ。今日はここで泊まろうか。小さな流れがあるので水さえ入手できればOKだし。と思ったのだが熊がちょっと恐いかなぁ。
 小さな流れを観察してたら道が川の方に向かって延びている。ショートカットの道に違いない。これを発見してはもう気持ちが萎えた。こっちに逃げよう。少々距離はあるが林道をてこてこ歩けば七入だ。

写真:「只見幹線115号」へリンク
只見幹線115号
写真:「只見幹線113号」へリンク
只見幹線113号


 目前の115号を小屋から撮影するに留めてリベンジを期してエスケープ。平らな矢櫃平の中を道はまっすぐ進んでいく。途中流れの跡の深い溝を何度か上下はしたが広く快適な道だ。
 道が右に曲がると川。橋はない。川が3本に分かれているようで徒渉は3回。一見靴を脱がなきゃならないかなと思えるが、通り道だからと頑張って観察した結果、靴を脱がずに渡りきる。川を越えると少し山道ですぐに林道に出た。
 この林道が結構長かった。あめ玉をしゃぶっりながら、とろとろと下る。

七入キャンプ場

 今日は七入のオートキャンプ場にテントを張る。オートキャンプ場に着いたら管理人さんがいない。「適当なところに張っちゃいなさいよ」と地元と思しき人に助言されテントを張る(次の朝ちゃんと支払いましたよ)。
 オートキャンプ場とはいうものの施設は便所と水場だけ。ビールなどは売っていない。ビールはないんですかねと聞くと手持ちのビールを分けてくれた。ありがたし。いい人だ。感謝感激なのだ。テントに帰り恵みのビールを飲んでバタンキュー。やぁ今日は疲れた。