海上鉄塔

 ひさしぶりに鉄塔を回る。今日は江東線の再訪。江東線が海上鉄塔であった時代の名残を確認に行く。
 西葛西の駅から南に進む。すぐに大きな道を越えるがこの辺りから先は埋め立て地、かつては海の上だった地帯だ。しばらく行くと団地の交差点に江東線87号が立っている。この87号から88、89号は江東線建設当初は海上に立つ鉄塔だったらしい。


 荒川河口に面して立つ89号は日本では珍しいドナウ型鉄塔だ。ドナウになった経緯はこうだ。
 89号から90号は荒川河口を長径間で越える必要があった。通常なら60メートルを超える高い鉄塔を建てるケースなのだが、近くにヘリポートがある。そのため60メートルを超えがると航空障害灯を設置しなければならない。しかし立地は海上である。航空障害灯の電源を陸地部分から引くのは困難だ。そこで鉄塔の高さを抑えるため荒川河口両端の鉄塔をドナウ型にしたのだそうだ。
 89号は現在も川の中に立ち、コンクリートのお立ち台の上にある。かつては川ではなく海の上だったのだろう。88号は建て替えられた赤白の鋼管鉄塔海上鉄塔の名残はない、残るは87号だがさてどんなものか。
 遠くから見ると通常の鉄塔だ。根本に近寄ってみた。オー! 何と根本にはほとんど埋まったコンクリート製のお立ち台が残っていた。埋め立てでお立ち台の高さの7割程度まで土が盛られたようだ。なるほどこれは海上鉄塔だったに違いない。27万5千ボルトにしては高さがないが、それもこの埋め立ての結果なのだろう。

写真:「団地の中に立つ江東線87号」へリンク
団地の中に立つ江東線87号
写真:「江東線87号の根本<br>ほとんど埋まったお立ち台の上に立っている」へリンク
江東線87号の根本
ほとんど埋まったお立ち台の上に立っている
<  ついでなので江東線の江戸川区区間、荒川から旧江戸川まで歩いた。この区間は送電線沿いに公園が延びていて、快適な散歩コースなのだ。新左近川親水公園を超える部分もかつては海。小さな入江を越えるルートだった。そう思って眺めると赤白角度の84号が一段とかっこよく見えた。
写真:「かつては入江を越えて送電線を支えていた84号」へリンク
かつては入江を越えて送電線を支えていた84号
*江東線のかつての姿は『架空送電線』―「275K江東線(海にルートを求めた送電線)」(http://overhead-tml.justhpbs.jp/koutousen.html)に詳しく書かれている。