花総線と市川あたりをふらつく

市川線

[5月21日の日記]


 何年か前の江戸川花火大会。恒例の場所取りのために昼から河原で寝転んでいた。川の方を見ると対岸に低く鉄塔が並んでいる。今まで気がつかなかった。あれは何という線だろう。これが花総線と私の出会いだった。


 次の日、市川へと出かけた。川沿いに適当に走る。市川も駅の周辺は今風の街だが川沿いはちょっとひなびて昔風。そして最初出会ったのは市川線。2万ボルトの小さな送電路が工場の受電装置へと入っている。
 市川線は小ぶりだがどこか雰囲気のある鉄塔たち、古い工場群や周辺の住宅とよく似合う。
 市川線の単独鉄塔部分は短い、市川線は花総線へと私をすぐに導いてくれた。


 花総線を若番側へとたどる。狭い路地を行ったり来たり。ある路地から次の鉄塔を透かして見る。突然、夕日のスポットライトにドラキュラ鉄塔が現れた。路地の行き止まりに大きく翼を広げ待ち受けるドラキュラ。花総線が私に送った鮮烈なメッセージ。「この線をたどれ!」
 あれ以来、何回花総線をたどっただろうか。

花総線49号
江戸川越えの花総線48号

 千葉県市川の下総変電所と東京都足立区の花畑変電所を80本弱の鉄塔でほぼ直線的に結んでいる花総線。実はとても不思議な送電路なのだ。


・花総線は1号鉄塔で突然地下へもぐり途切れる。1号鉄塔の位置は目的地の花畑変電所よりかなり北。花畑変電所へ曲がらずまっすぐ先を延長すると…今はない送電路経由で京北変電所まで行ける。
・花総線で確認できた一番古い鉄塔は大正12年10月。東京の区部周辺の送電鉄塔では1、2を争う古さだ。
 そして江戸川変電所から花畑変電所を結ぶ青井線にまったく同じ年月の鉄塔がある。花総線は現在の青井線のルートを取って花畑まで行っていたのでは? 花総線の21号鉄塔から白鳥線、江戸川変電所、青井線は地図で見るとひとつの直線上にあるのである。
・花総線は途中で切れている。江戸川の市川側にあるドラキュラ鉄塔をよく観察すると断続器が開いている。花畑変電所側と下総変電所側は回路的にはつながっていない。


 距離や位置からいっても千葉と東京を結ぶ重要な位置づけがあったと思われる花総線。歴史がある分謎も深い。


 歴史や謎解きだけじゃない。花総線はとても楽しめる送電路だ。
 花総線は長い年月をかけて、つぎはぎ的に直されているようだ。だから原型鉄塔もあれば美化鉄柱もある。鉄塔のバラエティが豊富。とても楽しめる鉄塔デパートなんだ。

中川を越える花総線25号

続く