鉄塔空き地

隅田線17号

5月20日の日記続きの続き)
 隅田線の13号で平和橋通りを越えるともう荒川はすぐ。通りと荒川の間の短い区間はとても素敵なところ。紹介したいがそれはまた別の機会にしよう。
 今日はまだちょっと時間がある。なくなったものを探そう。


 隅田線が荒川を渡る部分、私の2万5千分の1地形図には2本の線が近接して引かれているのだ。今は1本、幻の送電路だ。
 どちらも隅田変電所から出て川を東北へと横断している。北に描かれている線のほうが現在の送電線路に近い。近いがこれも微妙にずれている。この線は川の左岸で市街地の塗りつぶしで省略されてしまう。

地図
赤い線は現在の隅田線

 南に描かれている線。これは今はない。現在の19号鉄塔の位置からほぼ直角に川を渡る。斜めに横断する北側の線より自然な設計。川を渡った線はポンプ所を横断。そこで市街地の塗りつぶしに出会って省略される。
 まっすぐ進めば堀切変電所、途中で少し角度をつければその横の15号鉄塔に接続できそうだ。

花川線18号 (2005年撮影)

 北側の線を延長する。するとまた幻の送電路が地図上に現れる。この線は花川線・青井線と交差して変電所へと向う。この交差鉄塔は花川線の18号。今も使われていない腕金が残っている。


 なくなった鉄塔の跡を探してもたいていは徒労に終わる。でも以前、面白いものを発見している。謎の空き地だ。
 8メートル四方程度のま四角の土地。家も倉庫も建ちそうにない。駐車場らしいが。

四角い空き地 (2004年撮影)
扉

 ところでみなさんこのフェンス見覚えありません。そう東電の鉄塔を囲むフェンスと同じもの。フェンスが同じでも証拠不十分。でもこの入り口の跡。今はポンプ所の塀に接していて開かずの扉。くさいなぁ。
 そしてこの空き地の位置は地図に書かれた幻の送電路の真下なのである。鉄塔の跡地?!


 フェンスにはご用の方はと電話番号が書かれているが、肝心の会社名が抜けている。変電所跡地などで東電不動産の駐車場は見かけるが…。電話を掛けて何というか聞いてみたい。でもやめておく。私の単なる興味で仕事を忙しくするのは申し訳ない。


 今回はじっくり幻の送電路沿いに観察してみようというわけだ。経間からみてもう1本鉄塔が立っていたはずだ。もちろん徒労は覚悟の上。


 幻の送電路は堀切ポンプ所の広い敷地を横切っている。現在の建物だと干渉するかも知れない。
 ぐるっと回る。公園がある。送電線の下には公園は定番。何か関係あるだろうか。
 深く奥に入り込んだ駐車場がある。駐車場も送電路にはつきものだ。私も入り込んでみた。17号鉄塔が綺麗に見えるが鉄塔の跡のようなものはない。


 次のブロックへ移る。
 細い路地があった。向こう側からも路地が通っているらしい。つながらない路地。これは怪しい。送電線の下の路地も定番。うろちょろしていたら工場のおばさんと目が合った。


 「つかぬことお聞きしますが、この上に送電線が通っていませんでしたか?」
 きょとんとされてしまった。本当につかぬことだ。お忙しいところ本当に済まんことです。どうもここではないらしい。

鉄塔跡地?

 もう一度怪しいブロックを一周する。おや!あのフェンスは?
 住宅が建つのだろうか更地になった敷地の奥、塀越しに緑色のフェンスがちらっと見える。近づくと幅3メートル弱の使われていない細長い土地がある。そしてその奥に緑のフェンスが。
 反対側に回ると工場の敷地らしいがここも通路になっている。奥に緑のフェンス。おっ扉がついている。これは間違いない。
 残念なことに工場はお休みらしい。門が閉まっていて中には入れない。反対側の細長い土地の出口には消防団の資材倉庫が建っていた。横をすり抜け、反対からも観察する。間違いない。あれが鉄塔跡地でなければ何の跡地だというんだ。


 私の見つけた跡地は隅田線の鉄塔が立っていたのか、それとも花川線と交差していた路線なのかは分からない。でもかつてこの上空で2路の送電線が出会い、仲良く荒川を渡っていたことだけは間違いないだろう。


 先程から何人もが怪しげな視線を私に投げかけている。うーん。そろそろ潮時だなぁ。その場を離れた。こんどは工場が開いている時にやってこようか。でもまた「つかぬこと」を聞くのはちょっとしんどいなぁ。やっぱやめとこ。

5月20日の日記終り)


地形図は国土地理院発行 2万5千分の1地図画像「東京首部」の一部を使用しています。