中富線 早回り3 小金井の鉄塔

中富線59号

4月30日の日記続きの続き)
 JR線は中富線と一緒に進む。しばらく行って送電線に沿って細い道に入り込む。右に中富線、左にJR線の根元。中富線の裾が金網で巻かれている。シースルーのストッキングを履いているのか。カラス除けなんだろうか。



JR岡部境144号 この先は自動車行き止まりと書いてある。バイクはどうかな。ラッキー。バイクなら楽々通り抜けられた。
 川沿いの低い土地。おや向かいのJR鉄塔、一番上の腕金可笑しい!!
  ジャミラにコックさん帽子を埋めた感じの鉄塔だ。へんなの?!ジャミラ・コックさんと命名



 小さな川を渡り坂を登る。と坂の上にまた川が!? 少し驚いたが玉川上水だ。
 玉川上水は人工の川。羽村の堰から江戸まで43km、ゆるやかにうねる武蔵野台地を自然の勾配を活かして開削されている。
 だから川のすぐ上を上水が流れることもあるだろう。すこし驚いたがこれが玉川兄弟の苦労の成果なんですね。大したものだ。

 国木田独歩もこの辺りの玉川上水を歩いている。「武蔵野」にこんなくだりがある。

 長堤三里の間、ほとんど人影を見ない。農家の庭先、あるいは藪の間から突然、犬が現われて、自分らを怪しそうに見て、そしてあくびをして隠れてしまう。林のかなたでは高く羽ばたきをして雄鶏が時をつくる、それが米倉の壁や杉の森や林や藪に籠って、ほがらかに聞こえる。堤の上にも家鶏の群が幾組となく桜の陰などに遊んでいる。

 独歩の歩いた小金井の堤は明治30年頃。送電線はまだ通っていない。でも明治の末年に送電線が通った時もこんな風景であったに違いない。


JR岡部境142号 上水を越えると広大な小金井公園。JR線と中富線はこの公園に入る。独歩はほとんど人影を見ないと書いていたが、ゴールデンウィーク小金井公園は人また人。そんな下界を覗いているように木々の上からJR線が顔を出す。


 帰り支度の人でごった返す駐車場から鉄塔を振り返る。公園手前にJR岡部境線143号鉄塔がコックさん姿で静かに立っていた。
 主柱が屈曲せずに直線で頂上まで伸びている。ほほえましい姿に興味をそそられ根元を覗いてみた。昭和14年11月。建造年は書いてあるが補修年はかかれていない。原型だろうか?戦時下に建てられた鉄塔だ。

中富線57号・JR岡部境線143


 広い公園も日が翳ってきた。公園の空を送電線が行く。中富線は線を高く張り大きなステップを切り北へ、JR線は低く線を這わせ、細かい足取りで北西に。JR線と中富線はそれぞれの目的地へと別れていく。


 送電線はなおも北北西に進む。西武新宿線を越えると切り番50号。時間がない。なるべく広い道を選び大きくジグザグと進む。しばらく行くと変電所があった。前沢変電所。
 2回線を上下に振り分け、片腕を長く伸ばして送電線を引き下ろしている。なかなか美しい鉄塔だがもう薄暗い。写真を撮るにはぎりぎりか。
中富線39号 鉄塔番号は39号。時刻は6時少し前。あと40本弱。うーん明るいうちには到底着けないだろうな。
 変電所を出ると河原のような場所。土手には古い桜の大木が並ぶ。最後の「夕焼け小焼け」がスピーカーから流れてきた。


 しばらく走り、送電線をたどってどんづまりの駐車場へ入り込む。この辺りは土地勘はない一体どの辺りを走っているものか。分かっているのは中富線の25号と一緒にいることだ。25号鉄塔はいっぱい風車を付けている。回る風車ももう鈍い光しか返してこない。
 でも行く。送電線が見えるうちは前に進もう。


続く