中川の堤防から
(4月23日の日記の続きの続きの続きの続き)
ここで送電線は中川を越える。今日はここで終わりにしよう。土手に出て休む。
右手に花葛線、左手に潮止線。どちらもすっきりとした四角鉄塔。遠くには小松川線や亀戸線の鉄塔も遠望できる。
潮止線はまっすぐ、花葛線はぐるっと大回りをして同じ花畑変電所まで行く。
振り返れば潮止線19号の姿がある。自然に大きく足を広げ懐がとても深い。細いアングル材が繊細に空間を区分けしてゆく。最近の直線的な鉄塔が男性的であるのにくらべ、温かく母性のようなものを感じる。
大正から昭和初年へかけての朴訥で素朴な鉄塔ではない。工業力にものをいわせ、力で空を支配する近年の鉄塔でもない。あくまで自然にあくまで繊細に、戦後の昭和が生んだ傑作だと思う。
鉄塔の見下ろす中川も美しい。
中川下流は放水路であったり、荒川の脇をせせこましく流れたり、旧中川のように矮小化された川であったりする。でも中川の中流域は美しく豊かな流れである。
ダムによる流量調整や取水の結果だろうか、最下流を除けば、まんまんと水を湛えた川は見当たらなくなった。川辺も公園やら運動場やらにぎやかなことだ。でもここの中川は違う。
なだらかな蛇行。静かに流れる豊かな水量。広い堤防の内側は葦が生い茂り、あるいは一面の耕作された畑。それが延々と上流に向かって広がる。
そんな流れに花葛線と潮止線は美しい鉄塔の影を落としながら渡っていく。
(4月23日の日記 終り)