ドナウの二乗
只見幹線と桜ヶ丘線の交差点へ行く。多摩川の土手の直前だ。桜ヶ丘線をまたぐ只見幹線の545号は背が高い。
くぐる桜ヶ丘線。交差の直下に32号が立つ。高さは33m、とても小さく見える。
前後の桜ヶ丘線鉄塔は背が高い。32号がその線を力いっぱい下に引きおろし只見幹線をくぐるのだ。4回線12本の送電線をくぐらせるのだから大変だ。うっかりすると鉄塔ごと持ち上がってしまうかも知れない。
32号は左右4段8本の腕金で送電線を密集させて持っている。ん? 8本の腕金?! 4回線鉄塔なら腕金が12本が普通。どうなっているのか?
一番上の腕金には送電線が1本、次は2本、3段目は1本、一番下は2本支持されている。何とドナウの二階建て鉄塔だ。
ドナウ鉄塔というのは教科書にも載っている送電鉄塔のひとつの類型だ。
普通の鉄塔はひとつの腕金に1本の送電線。1回線3本の送電線を3つの腕金で支える。ドナウ型では3本の送電線を2本の腕金―上段で1本、下段で2本―で支える。送電線が三角形に配置されるのが特色だ。
このドナウ型を二つ重ねた鉄塔は送電鉄塔愛好家の中で「ドナウの二乗」鉄塔*と呼ばれているお宝鉄塔なのだ。
ドナウ型鉄塔は低い塔長に長く張り出した2本の腕金。安定感があって、とても優雅な形だ。
でもこの鉄塔は2階建て、さほど長くない腕金に送電線を無理やり詰め込んで懸命に下に引っ張っている。
小さな身体に目一杯の仕事を抱えこむ。優雅どころかオーバーワーク。お仕事たいへんですね。でもがんばってね。
「ドナウの二乗」とは思わぬ拾い物。ちょっと待てまだ何か引っかかる。
よく見ると下2段の腕金が逆三角じゃあないか。腕金の三角形の上辺が水平になっている。何でこんな腕金にしたのか? きっと理由があるに違いないが不思議だ。これはよくよく個性的な奴だ。