17号の遺跡

日原線17号

11月20日の続き)


 旧道が尽きる手前。谷際にコンクリート製の階段が下りている。階段を下ると不思議な場所に出る。


 不思議な場所。片隅に17号鉄塔が立って、谷の向こうの最終鉄塔へと最後の送電線を繰り出している。
 さほど広くはない、でも鉄塔が1本立つには広すぎる。平らに整地され、コンクリートの低い柵で囲まれている。敷地には残された土台が数個。鉄塔や鉄構にはちょうどよさそうな大きさ。そして平らにコンクリートを打った跡。小さな小屋ぐらいは建ちそうだ。


 かつてここに何かがあったことは間違いない。変電施設があったのだろうか、それならこれが最終鉄塔だったのだろうか。残された土台を眺めても明快な答えは見えてこない。
 敷地の脇に使われていない木製の電柱が一人立っていた。蔦の帽子を被った彼に聞けば昔の姿を語ってくれるのだろうが。


 17号が差し出す送電線は対岸の18号鉄塔に。最奥の小さな鉄塔と変電所。そこは送電線の行き止まり。大きな山肌の中ぽつんと立つ鉄塔は、紅葉の衣装にさりげなく着けた輝く宝石だ。

日原線18号


 道はそこから数百メートルで途絶える。つり橋はケーブルを支えたコンクリートの支柱だけが残り、気持ちよさそうな山道はそこで空中に消えている。途中、崩壊した箇所もあったがもう修復することもないだろう。


 行き止まりに使われていない古い電柱が1本。木柱、黒いアスファルトが塗られたトランス、木の腕木。瀬戸物で出来た切断機。地面に碍子が転がっている。


 役目を終えたものは消えていかなくてはいけない。でも滅びの姿に心が魅かれるのは何故なのだろう。観光客の愛でる山の紅葉も打ち捨てられた廃墟も、晩秋の暖かい日差しは分け隔てなく照らしている。


続く