出発の鉄塔

多摩川送電線4号

2005年11月6日の続き)
 一旦バイクまで戻り「むかしみち」の最終の地点まで進む。「むかしみち」は左岸の山へと登っていく。その尾根を送電線は越える。
 このまま進めばダムの直下。そこに1号と発電所があるに違いない。でもその前に尾根の上の鉄塔に会いに行こう。


 尾根の集落のどん詰まりにバイクを止め、山道を少し下ると鉄塔。多摩川送電線2号。やはり焦げ茶に塗られた四角鉄塔、平に整地された土台に立っている。多摩川送電線2号静かな山道に突然開けた秘密の場所。晴れていたら寝ころがるところだが。
 ここから1号鉄塔が見えるのではと期待したのだが木立が繁っていて見えない。送電線は見えない谷底へ急角度で下る。


 川筋へ戻る。ダムの方向へ進むと「関係車両以外は立ち入り禁止」と札が出ている。ちょっと困ったが車両じゃなけりゃ構わないかと歩いて入り込む。(良い子はまねをしないように)
 少し下って尾根の裾を回り込むとそこは小河内ダムの真下だった。圧倒的なコンクリートの塊が目の前を塞ぐ。大きな吐水口。そして発電所らしい白い建物、変電施設、その横に1号鉄塔は立っていた。塔体は20mくらいはあると思うが大きなダムの下に隠れるように立っている。多摩川送電線1号


 発電所は白、変電施設は銀、何故か鉄塔はここでも暗い茶色に塗られている。地味で小さな1号鉄塔。だけどこれは特別な1本だ。


 ここから先に送電線は延びていない。辿り着いた最終の鉄塔、いや、これは出発の鉄塔なんだ。
 発電所から送電線を受け取った1号鉄塔は、山の上まで急な角度で送り出す。山の上は送電線の街道だ。そこから送電線の旅は始まる。
 1号は谷底から遥か高い送電線の街道を見上げる。玄関先で子の旅路を見送る母親のように。


 東京の中にある送電線の出発地へ行こう。それが奥多摩通いのきっかけだ。だからこの旅はここで一段落。あまり天気に恵まれなかったが、夏の終りから秋が深まる時間を静かに味わえたんじゃないだろうか。一雨ごとに秋はやって来た。来週か再来週はきっと紅葉の真っ盛りだろう。


 湖畔に行ってラーメンを作って食べる。今日はチンゲン菜入りだ。食べ終わった頃大きな雨粒が落ちてきた。さあ帰路は雨の中3時間。全身しっかりと雨具で固める。こうすれば雨もまた楽しである。