つくばエキスプレス開通記念・台風紀行 その2

潮止線26号・花畑線1号

2005年9月7日の日記の続き)

 ほとんど客のいない駅を降りる。駅前の鉄塔は潮止線の26号鉄塔、そのすぐ先に花畑線の1号鉄塔が立っている。
 潮止線は大きくのびやかに足を広げ4回線の送電線を悠然と支えるアングル鉄塔。花畑線の1号はすくっと直線的に立ち上がった鋼管鉄塔。個性の違うふたつの鉄塔が雨の中僕を出迎えてくれた。


 潮止線は1本先の赤白鉄塔で亀戸線と交差して北へと越えていく。花畑線は亀戸線から分かれた送電線を受け取って花畑変電所へと導いている。2本とも台風の中、持ち場を離れず、いつもより心なしか凛々しく見える。
 駅を少し戻ると大瀬変電所。ここに立つ花畑線2号へもご挨拶する。雨は時折強くなる。ビニール傘1本ではやはりきびしい。カメラが濡れないようブルゾンの中へ隠し亀戸線のほうへ進む。


 亀戸線の50号に辿り着いたとたん気が狂ったような土砂降り。風も強く吹きつける。雨宿りをするにも回りに適当な建物がない。公園の物置の影に隠れやり過ごす。腰から下は早くもびしょ濡れだ。気温はそこそこあるので寒くはないがやはり気持ち悪い。
 せっかくだから土砂降りの雨に向かって何枚かシャッターを切る。でもやっぱり雨は写らない。カメラがずぶ濡れになりそうなので諦め、小降りになった雨の中、亀戸線を下る。


 黒い雲の塊が次々に空を渡っていく。不安を掻き立てるような雲の下、鉄塔はみじろぎもせず立ち、しっかりと送電線を渡している。
 うん、この姿を見たかったんだよね。とても満足だ。雨で重くなったズボンも、グチュグチュと音を立てるスニーカーもこの姿を前にしたら気にならない。


 また雨足が強くなり、こんどは道端の納屋に救われた。しばらく休んでいると雨が小降りに、そして空の様子が目まぐるしく変化し始めた。
 低く黒い絨毯のように覆っていた雲がバラバラに離れ出し、その上に白い雲が顔を出す。天国の白い雲、地獄の黒い雲、何層にも分かれた雲のページェント。そして空の1点に穴が空き、青い空が覗いたかと思うとそれがみるみる広がっていく。


 納屋から外へ出てみると、ついさっきまで悲壮感さえ漂わせ頑張っていた亀戸線の51号鉄塔、薄く差した日差しの中とても気持ちよさそうに立っている。


(続く)