つくばエキスプレス開通記念・台風紀行 その1

亀戸線・小松川線・花葛線

 台風だ。午前中に仕事の打ち合わせが終わり、午後はお休みにすることにした。
 「台風だからお休み」というと何か重大なことのようだが、実は台風なのでお出かけなのである。
 昔から台風はわくわくする(被害に合われた方々にはもうしわけないのだが)。黒々とした雲、強い風、痛いほどの雨。こんな日に鉄塔を見ない手はない。だから出掛けにカメラは一式持って出た。でも雨具はビニール傘だけ。ちょっと躊躇するが台風は駆け抜けていく。時間はない。そのまま鉄塔を見に行くことにした。


 近場でなるべく見通しのよい鉄塔を考えた。そうだ「つくばエキスプレス」が開通したではないか。まだ乗ったことはないが、たぶん‘あそこ’に行ける気がする。
 秋葉原の「つくばエキスプレス」の駅に着いた。さあどの駅で降りるか。青井では近すぎるし三郷中央まで行っては行き過ぎだろう、たぶん‘あそこ’は八潮、とあたりをつける。


 「つくばエキスプレス」は都内のほとんどを地下で通過する。隅田川と荒川は高架で通過するが線路はふたたび地下へ。青井の駅も地下。この駅を地上へ出れば青井線と花川線が真上を通っているはず。次の六町。ここも地下駅だ。ここを出れば花畑変電所や花畑線や潮止線、花葛線に会えそう。これは便利だ。
 そこから電車は一気に距離を延ばし目的地の八潮駅へ。いったいどこへ出ることやら、初めて遠足に出た子供みたいにわくわくする。
 しばらくして線路は地下を抜けて高架になった。何と車窓の目の前を送電線が並行して走っているではないか。これは一体何線だ。と観察する間もなく八潮の駅へ着く。


 あて勘で選んだ八潮駅。思った以上のどんぴしゃで‘あそこ’――送電線銀座のど真ん中に着いた。
 駅名は八潮だがここは市の中心からとても離れている。辺りは畑と工場や空き地。閑散としたところだ。今まではとても交通の不便なところ。鉄道なら三郷か草加か金町か。どれもとても遠い。でも送電線を辿っていれば何度も通り抜ける送電線の一大交差点。お馴染みの場所だ。


 東西を亀戸線が通り抜ける。南からやって来て亀戸線へつながる花畑線。そのすぐ脇を並行して走り、北へ抜けていく潮止線。花葛線も少し離れて北へ向かい、小松川線もその先で交差している。天気が良ければ西のほうに京北変電所の鉄塔林も見えるはずだ。
 高架になっている駅の上から西の方角を遠望する。厚い雲の下、亀戸線小松川線、花葛線がどこまでも連なっていた。

(続く)