枯山水

駒沢線23号

 商店街の裏側、家が立て込んだ地域にある鉄塔。いつもの緑のフェンスと有刺鉄線ではない。鉄塔下に入れる。おまけに小さな門扉まである。中を除いてびっくり。


 中央に石組み、手水鉢もある。まわりは回遊式に飛び石が。山に見立てた植え込みに椿の花が咲いている。低くツツジ。椿が終わればツツジが咲くことだろう。下生えには龍の鬚。きちんと仕立てられた枯山水だ。


 でも回りはマンションや商店の裏側に囲まれている。この庭を眺める窓すら見当たらない。民家の庭先の鉄塔ならこんなこともあり得るが、これはいったい…。しばらくしてこんな推論に達した。

 かつては隣のマンションは普通の民家だった。そしてその庭に鉄塔があった。鉄塔に向かって濡れ縁があり、そこからこの枯山水を眺めていた。枯山水は明らかにマンションの壁に向かって作られている。

 真偽はさておき、この飛び石、アスファルトのかけらをうまく使ったもの。高価な飛び石を買い込むのではなく、身近に捨てられたものを巧みに活かす。これは庭としてとてつもなく本物じゃあないか。