江東線という送電路 東京大停電7

江東線82号

8月16日の日記の続き)
 今日で終わりそうですかと聞くと10時頃までには終わりそうだという。日も暮れたので食事に行くことにした。


 東京は50万ボルトの環状線――電気の輪で取り囲まれている。発電所からの送電はすべてこの環状線に入り、そこで電圧を27万5千ボルトに落として都心へ向う。都心部はすべて地下送電路。
 江東線は船橋の奥にある50万ボルト新京葉変電所をスタートし江東区にある江東変電所までを90本余りの鉄塔で結ぶ。架空送電路としては東京都23区内へ入る唯一の27万5千ボルト系統であり、都心を通過する10系統程度ある27万5千ボルト超の地下送電路のうち2つに電気を供給しているようだ。


 途中の市川にある葛南変電所から伸びる地下送電路は都心を横断し世田谷変電所へ。世田谷変電所は横浜の荏田変電所と地下送電路で結ばれている。江東線終着の江東変電所からは都心の城南変電所を経て新宿変電所、北多摩変電所へと地下送電路が結ばれている。今回の停電事故が広範囲に渡ったのはこんな地下のからくりがあるからだろう。


 この線が開通したのは昭和42年。27万5千ボルト初の都心乗り入れを果たした歴史ある送電路だという。
 大きな電圧であれば大きな容量の電気を送ることができる。だから急増する電力需要をまかなうために都心近くまで高い電圧の送電を直接行うことが要請されていた。その要請に従って建設されたのが江東線なのだ。

新京葉変電所 江東変電所
左・新京葉変電所 右・江東変電所


 27万5千ボルトの送電路となると送電線の下には建物を建てられないのだそうだ。だから27万5千ボルトの架空送電路は東京周辺ではもはや建設不可能だろうと現場にいた方がいっていた。そういわれれば江東線の下はすべて公園や道路だ。江戸川区内を走る江東線もすべて広い公園の中だ。
 27万5千ボルトの架空送電路が建設不可能だからといって、地下送電は建設コストも保守費用も莫大、そう簡単には建設できない。勢い江東線はますます貴重になり大きな容量を担うことになる。
 だからまだまだ現役バリバリの送電路。私にとっては身近な送電路なのだがとても大きな仕事をしている。そんな送電線のそばに暮らしていることが少し誇らしい気持ちがする。
(続く)


事故が比較的詳しく報道されている記事 【リンク切れ】
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200608150010a.nwc (BusinessI on the web)
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/closeup/news/20060815ddm003040035000c.html(Mainichi INTERACTIVE)