神田川という名の鉄塔

神田川線??

 淀橋変電所はいつか行かなければと思いつつ、つい行きそびれていた。
 今日は夕方に世田谷に用があったのでちょうど良いと淀橋変電所へ向かう。


 新宿は古い時代から知っている。淀橋上水場だって見たことがある。だから淀橋変電所はすぐに見つかると高をくくっていた。
 それがうまく見つからない。一方通行に阻まれて自由が利かない。ぐるぐるぐるぐる、ほとほと嫌になる。新宿副都心の目と鼻の先で狭隘な迷路に迷う。これも新鮮ではある。
 何とか神田川にかかる橋から変電所を発見した。


 淀橋変電所は日本の水力発電の歴史では必ず登場する変電所。特別な思いを持って眺める。


 思い入れをもって眺めても風景が変わるわけではない。門型鉄塔が林立していたという神田川も変電所も何事もなかったようにひっそりとたたずんでいる。背景に副都心の高層ビル。


 唯一目を惹くのは川沿いに立っている使われていない低い鉄塔。
 面白い形をしている。神田川を門型鉄塔を連ねやってきた淀橋線はこの鉄塔で受電していたのだろうか。


 送電線を引き下げるために垂直に張られた電線。下部にはクランプが付きそこから地下ケーブルへジャンパー線が延びる。上部にもクランプ。でもその先に付いていたはずのジャンパー線はすでにない。


 それなりに高さがあった鉄塔を切り縮めたような形。この上に送電線を受け取るための腕金が活躍していたのだろうか。下部だけ残した理由は何なのだろう。


 鉄塔に送電線はつながれていないが、そこから地下ケーブルは延びている。地下ケーブルを双眼鏡で観察する。ケーブルには案の定、看板が設置されていた。

 神田川(塔)〜神田川

 普通の解釈ならこの鉄塔は神田川線の鉄塔、そして地中線経由で神田川変電所に行っていることになる。淀橋線という名称を期待したが書かれているのは「神田川線」。聞いたことがない。「神田川変電所」という変電所もどこにあるのだろうか。


 長い遍歴を背負い鉄塔は立つ。幸い敷地は広い。まだしばらくは残っていてくれそうだ。
 副都心の高層ビル群は西口公園を飛び越えてこの地域まで侵食しつつある。当分先のことだろうけど、ここに高層ビルが建つ日も来るのだろう。その日この鉄塔の記憶が失われていく。



 追記:変電所の中を覗いていたらこんな看板が「猫侵入恐れあり!!扉は必ず締めて下さい!!」。思わず(^o^) 我が輩が猫ではないこと、つくずく残念だ。