多摩川に立つ原型鉄塔たち

千南線特5号と久地変電所

5月27日の日記続きの続き)
 丘を下ると川世線と千南線は並んで進む。多摩川に向かって右が川世線、左が千南線、2つの鉄塔を同時に味わえる贅沢三昧。

 丘を下ってすぐに久地変電所がある。
 久地変電所の引き下げ鉄塔は千南線の特5号(併架している川世線から独立した千南線単独鉄塔は「特〜」と名前が付けられている)。右手を進む川世線から送電線を受け取って変電所に下ろしている。
 上段は千南線6万ボルト、下段は15万ボルト。電圧が高いほうが下というのは珍しい。腕金も下段のほうが大きいから、とても不思議な形になっている。上段の短い腕金が顔、下段は胴体。碍子の腕を振り回している。


 さあここからが佳境に入る。多摩川まで川世線も千南線も残すは2本。
 最初に現れるのが工場の中に立つジャミラ鉄塔ジャミラに形容するにはちょっと一番上の腕金が深めの三角形をしている。川を越えた川世線には多く残る形。「イカ型鉄塔」と呼んだほうが似合っている。

川世線25?号 千南線特6号 川世線26号 千南線特7?号
左から川世線25?号、千南線特6号、川世線26号、千南線特7?号


 今日最初の原型鉄塔に勇気づけられ工場の事務所に寄って足元まで行ってよいか聞いてみた。答えは「今日は総務がいないからだめ」。うーん残念。総務がいれば「OK」と言ってくれるのだろうか。めげる。


 次は千南線の鉄塔だ。これはコンクリート工場の中。さっきのやりとりで力がでない。外から写真を撮る。たぶんこれも古い。川世線や千南線では珍しい三角帽子の簡潔な鉄塔。この形好きなんですよね。


 お次は川世線の多摩川越えの鉄塔だ。これも頭の大きいイカ鉄塔、三角が浅いのでジャミラかな。昭和15年の表札が確認できた。


 さあ最後だ。千南線の川越え鉄塔。川向こうはロケット型のとても面白い姿。そして足元はレンガで出来た土台というお宝鉄塔なのだが。
 堤防に上り鉄塔に近づく。やはり裾広がりのロケット型。堤防を降り根元に…レンガの土台。とても納得する。

千南線のレンガの土台

 東京側の鉄塔は公園のようにきれいに整備された河原に立っていた。根元も結界も入れた。残念なことにこちらは暗い林の中、低い柵があって近寄れない。「私有地につき立ち入り禁止」の立て札。今日はよくよくめげる日だ。
 公園のような東京側もよいが木立に囲まれ、隠微な雰囲気を漂わせるレンガ土台も味がある。


 多摩川の河原に出る。対岸は雨にけぶって鉄塔のシルエットも薄い。河原の草原を歩き回っていたら靴下が濡れてきた。撥水スプレーの効果も力尽きたようだ。
 街道沿いのドトールで靴を脱ぎ乾かす。地図を見ると溝口までは小田急向ヶ丘線をたどると近道だ。やった溝口まで小田急向ヶ丘線をたどって帰ろう。早い夕闇の中、二カ領用水沿いに木柱たちをゆっくり楽しんで帰った。雨の日の散歩はやはり川沿いが良い。

東京側へ続く川世線

5月27日の日記 終り)