鉄塔たちの砦

北葛飾変電所(2004年)

 久しぶりに北葛飾変電所へ行った。目的はあるなくなった路線の痕跡を見たいということなのだが、この話はまた別の機会にしよう。


 変電所はどれも好きだがこの変電所には特に思い入れがある。私が最初に辿った鉄塔たち――小松川線の長い旅の末にたどり着いたのがこの北葛飾変電所だ。埼玉県吉川にある。
 小松川線と亀戸線、そして潮止線。3つの15万4千ボルト系統の出発点。そして北側に入る北葛飾線は27万5千ボルト、この線をなおも遡れば江戸川を越え50万ボルト新野田変電所へと導いてくれる。


 小松川線と亀戸線併架しているから4回線鉄塔が3路線出入りするだけ。送電路の数から言えばシンプルな中間変電所だ。でもさすがに27万5千ボルト級の変電所だけあって風格がある。(実は27万5千ボルトの地下送電も行っているらしい)
 この変電所の素晴らしいのは立地。変電所西側に少し民家がある以外、周囲は川と水田。自動車も人間も変電所の周りに近づかない。それがとても素敵な鉄塔だけの世界を作る。鉄塔の王国とか城というには少し小さいから、鉄塔たちの砦なのだと思う。


左側2本が小松川線と亀戸線 右側2本が潮止線 今日は江戸川をひたすら遡って吉川まで行った。花総線の古い大鉄塔を走り抜け、小松川線を2度くぐり、花葛線のレトロな鉄塔を過ぎるとそろそろ吉川。かつてはその辺りに1本の送電線があったらしい。それを辿れば北葛飾変電所へ着いたはずだが今はない。適当なところで曲がる。
 江戸川も三郷を過ぎると風景がぐんと田舎になる。特に川の周囲は民家もなく広々と開け、川沿いの道もほとんど車が通っていない。
 いつもは夕闇迫るころようやくたどり着く変電所も今日はまだ昼前。曇りなのが残念だが4本の鉄塔がいつもどおり聳え立って迎えてくれた。鉄塔砦の屈強の番兵たちだ。


続く