ケーヨーリゾ−ト

一番手前が美浜線1号

 送電鉄塔というとどこまでも真っ直ぐに立ち並ぶというイメージがある。でも東京ではそうもいかない。右に左にと曲がりながら送電線をつないで行く。市街地は用地買収の問題があるから仕方ないだろう。でも郊外に出てもけっこう曲がりながら進んでいく。川あり丘あり山あり、沙漠に送電線を通すのとは事情が違う。


 真っ直ぐに並ぶ鉄塔を見たければ田圃の広がる郊外まで足を伸ばすのが一番だ。でも東京のすぐ隣にも真っ直ぐに鉄塔が並ぶ場所がある。東京から江戸川を渡って最初の街、浦安の外れに約3.5キロ、17本の鉄塔が正確な直線上に並んでいる。
 ここはかつての埋め立て地の外れ。海を直線に仕切った堤防の外に送電線を通したのだろう。まだ当時の堤防が残っている。


 数本を除き鉄塔はすべて美化鉄柱。四角鉄塔の直列はあっても、美化鉄柱の17本直列ってのは珍しいだろう。こんなところになぜ金のかかる美化鉄柱? それはここが大規模開発の土地だからに違いない。


 今はこの堤防の外も埋め立てられ、新しい街が生まれつつある。本家本元の浦安は古い街だ。でも湾岸道路を越えた新浦安はつい最近開発されたおしゃれな街。そしてその先にまた新しい街ができつつあるわけだ。東京至近。急速に開発が進むのは当然だ。
 広大な空き地の中に高級そうなマンションが数棟、唐突に建っている。あと何年か経ったらどんな風景になっているのか。
 そのうちこの堤防も撤去され、おしゃれな街の真ん中を通る公園にでもなるに違いない。おしゃれな街には普通の四角鉄塔は似合わないってわけか。


 送電線路名は最初は「美浜連絡線」、次に「美浜線」、最後は「ケーヨーリゾ−ト線」と変わっていく。「美浜連絡線」や「美浜線」の区間は住宅地の脇を通る。名前が「ケーヨーリゾ−ト線」に変わると送電線は工業地帯の中を進む。
 「ケーヨーリゾ−ト線」全部カタカナ。「ケーヨー」はたぶん東京と千葉の中間を指す「京葉」かな。だとすると「リゾ−ト」って何だ。辺りは大きな工場だらけ。一区画は数百メートル、巨大な工場が並び、広い道を大型のトラックが唸りを上げて通り過ぎる本格的な工場地帯だ。「リゾ−ト」?! 悪い冗談だろう。


 疑問を抱きつつ送電線を辿る。埋め立てられた堤防の外は広い道路用地がまっすぐに通っている。まだ一部しか開通していない。未開通部分には当然橋はない。最後の詰めでは鉄塔2本を残して運河にぶつかった。2本のために上流の橋まで数キロも迂回。ようやく最終の鉄塔に辿り着く。ここで送電線は地下に潜っている。


 路線名の謎は最終鉄塔から、なおも真っ直ぐに進んですぐに分かった。最終の鉄塔から数分も歩けば風景は急変する。堤防沿いに通る道には椰子の木が植えられ、走る車も乗用車と観光バス。ほこりっぽい産業道路南欧風海岸通りへ豹変する。
 右手の木立の先は「東京ディズニー・シー」そして「東京ディズニー・ランド」と「リゾート」ホテル群。なるほどたしかにこれは「ケーヨーリゾ−ト」だ。