寂しい木馬

sarumaruhideki2005-04-29

 電車の線路沿いに送電線が延びていることはよくある。鉄道会社の送電線ではなく東京電力の高圧線だ。建設年が鉄道が開業した年という古い鉄塔も珍しくない。


 電車の路線沿いの鉄塔は単調で面白くないという偏見を持っている。同形の門形鉄塔が延々と続く。鉄塔の間隔も通常の送電経路よりぐんと短い。長い路線を1本1本確認するのは苦行に近いのだ。
 そんな送電経路だからこそ、ちょっと変わった鉄塔を発見すると感激も一入――千鳥線の深い切り通しを高く高く送電線を持ち上げるスマートで力強い門型鉄塔、目白線の駅毎に立つどうどうと大きな門形鉄塔――みんな記憶に残る鉄塔だ。


 板橋線は東武東上線沿いに進む送電線だ。練馬線と東武東上線との交差で併架されてきた練馬線から分かれる。練馬線を辿った折りに存在は確認していた。でも鉄道沿いということもあり敬遠しておいたのだ。


 連休の初日。朝寝をしてからゆっくりと鉄塔詣でに出かけた。戸田変電所から戸田線を辿る予定。のんびり起きたついでだ、環七から東上線沿いに進んで板橋線を見ていこう。


 ときわ台付近で川越街道をそれて北上、東上線に出たが送電線はない。左折して線路沿いにしばらく進み、ありました送電線の終点、『東武鉄道株式会社 ときわ台変電所』。こじんまりとした建物だ。
 変電所のすぐ先に最終鉄塔。線路の上に立方体に組んだ鉄構(94号の1)から道路を越えて線を渡している。そこから送電線は地下にもぐり変電所に向かっているのだろう。


 線路上の立方体の鉄構も、延びる線を受け取る鉄構もなかなか良い。受け手側の鉄構――たぶん94号だろう――は木馬のような感じで親しみが湧く。


 ちょっと待てよ。94の1号までは2回線6本の送電線が来ているが、受け取る94号は1回線3本だ。3本の送電線が線路上の鉄構でむなしく終わっている。
 受け手の鉄構を見直すと鉄構が撤去された跡。ここに木馬が2匹いたのか。


 あらためて木馬鉄構を見る。片割れだけ残った木馬が寂しげに見えた。


(この項続く