近所の鉄塔たちII 船堀橋線

船堀橋線3、4、5号 遠くに6号

 船堀橋線は1号鉄塔から6号の甲乙鉄塔まで、最後の6号は甲乙2本に分かれているので7本の短い送電線路だ。小松川変電所から荒川を渡り、向かい側の船堀橋変電所まで、距離にしても2キロ強程度のものだろうか。でもどれひとつとして同じ格好のものがない。


 最初の1号鉄塔小松川変電所に隣接する電柱置き場に立つ引下げ鉄塔だ。重装備で無骨。ちょっと重みを感じる鉄塔。

 そこから訓練用鉄塔の上を通り船堀街道脇にすくっと立っているのは2号。標準的な灰色の四角鉄塔だ。高さが65mある大きな鉄塔だが均整がとれてすらっと見える。

 2号の根元からは送電線に沿って細い路地が延びる。路地を抜け工場や資材置き場のある地域に3号。3号は紅白に塗り分けられた四角鉄塔。紅白の派手な衣裳に加えて途中の腕木を長く突き出している。これも70m級の大きな鉄塔。


 3号からは河原に立つ河川越えの背の高い矩形鉄塔が見える。でもその手前にとても低い矩形鉄塔が控えている。
 ふたつののっぽ鉄塔の送電線の撓みの最下点に位置し、その先1キロ以上ある荒川越えの重量を、耐張碍子を思いっきり張り足を踏ん張って支えている。色も黒っぽくとても地味。でも大切な役割を担った鉄塔だ。


 5号は中川と荒川を隔てる中土手に立つ赤白の大きな矩形鉄塔。小さな腕木を左右に延ばし、V吊りで4回線を高く持ち上げる。
 日暮れになるとてっぺんに赤い航空灯をともす5号は船堀橋線を代表する鉄塔だ。


 長いゆったりとした曲線を描き送電線は川向こうの6号へ伸びる。
 6号は甲乙ふたつの双子の四角鉄塔。5号から2回線ずつ受け取り地下に下ろしている。すぐ隣には船堀橋変電所が。
 この周りは再開発でとても大きな公園になっている。公園の緑と黒い双子の鉄塔が良く似合う。広々した公園の素敵なアクセントだ。


 この7本毎日見ているので名前がついた。
 最初に名前づけたのは6号の甲乙。船堀橋の入り口に2本並んで立っている。船堀橋の「双子の門番」だ。
 次に名前のついたのは2号。毎晩帰宅途中で夜空に黙ってすくっと立つ姿に惚れた。「貴婦人」。自然そんな名前が浮かんだ。もっとも他の人が見たらごく当たり前の四角鉄塔だろう。恋とはそんなものだ。


 隣の赤白鉄塔3号はあまり好きになれない。腕木を振り回すように伸ばしちょっとお転婆。衣裳だって赤白の派手好み。ちょっと苦手なタイプだ。そうか控え目な貴婦人がお姉さんでこの鉄塔は「妹鉄塔」だ。次女というのは長女とは対照的なもの。
 ということで2号と3号は姉妹ということになった。6号の双子の兄弟はちょっとお茶らけている感じもする。だからこれは弟に違いない。


 そこから後3本が決まった。1号は背は高くないががっしりとした不動の姿。船堀橋線の「お父さん鉄塔」だ。中土手に立つ5号は大きく豊かな懐を持つ「お母さん鉄塔」が似合う。服も赤白で女性的だ。
 すると残る地味な背の低い4号鉄塔は何だろう。きっと長男に違いない。生真面目に一番大切な力仕事を黙って引き受けている「お兄さん鉄塔」。いい奴だ。