青井兵和商店街

青井線4号と花川線4号

 休日とはいえ年末だから本当は会社に出なければならない。でも引っ越しの後片付けが終わらない。午後遅くまで片づけと掃除に追われ、一段落で久しぶりに原チャで鉄塔へ向け出発。
 暖冬が続いていたが今日は寒い。平年並みなのだろうが、なまった体には堪える。中川の土手通りをピュンピュン飛ばす。寒風と格闘していたら頭が真っ白になり、荒川を逸れ綾瀬川のほうへ迷い込んでしまった。ままよ、とそのまま綾瀬川を遡る。と前方に送電線が。
 花川線4号。お、向こうにももう1系統。青井線4号。綾瀬の駅前や花畑変電所ではお目にかかった線だ。ピンポイントでは知っているがまだちゃんと辿ったことはない。よし、これで行こうと原チャを駐めて歩き始める。


 それにしても寒い。喫茶店でも入って温まろうと商店街らしき通りに入る。喫茶店がなくとも携帯カイロくらいは買えるだろう。
 通りの小さなスピーカーがクリスマスソングを小さく流している。音の小ささと同じように人通りもとても少ない。大きなスーパーもコンビニすらない。鉄道が通らない陸の孤島に点在する小さな商店街だ。それでも肉屋の店頭では親父さんが鳥を丸焼きしている。クリスマスだよね。
 少し奥まって銭湯があった、‘よつや湯’。少なくなった寺社造り、大きな煙突も健在だ。煙突には子供の喜びそうなペンキ絵が書かれている。浴槽のペンキ絵は定番だが煙突一面のペンキ絵はユニーク。きゅっと熱い風呂に入ったらどんなに幸せか!でもその後、原チャで長い道中、諦めるしかない。


 街灯から下がるペナントには「青井兵和商店街」とある。「兵和」って何だろう。ペナントには‘つくばエクスプレス’が描かれている。この街にそのうち常磐新線が通るらしい。この辺りもずいぶん変わるのだろう。と、商店街の外れまで歩いたがついに喫茶店も薬局も探し損ねた。


 日はどんどん暮れて寒さが身に沁みる。もう3号なのだからと先に進む。団地の庭に3号、青井線と花川線が並んでいる。花川線はとんがり帽子をちょこんと載せた矩形鉄塔。青井線は両側に腕木を延ばし、頭に2つ耳を出した「ネコの耳鉄塔」だ。
 「ネコ鉄塔」といえば烏帽子型鉄塔の愛称として使われているが「ネコの耳鉄塔」というのもある。ちょこんと飛び出した耳がとても愛らしい。夕焼けの中にとんがり帽子とネコの耳が仲良く並んで立っていた。


 2号へ向かって歩くが鉄工所に遮られて進めない。この辺りとても道が入り組んでいる。大回りを覚悟してふと見ると駐車場の金網に大きく開いた穴。私も便利に利用させてもらう。


 2号まで来た時にはすっかり日が暮れた。先を見ると大きな通りの向こうに鉄塔が何本も立っている。真ん中に高く通信鉄塔、やあ花畑変電所だ。花川線と青井線が変電所にちゃんと入るのを見届ける。
 この変電所から北に出る送電線は普通の四角鉄塔だが、南に出る送電線はみんな矩形鉄塔。形も面白いものが多い。花川線と青井線ともう一本、蔵前線。これもユニークな矩形鉄塔だ。これも一度は辿りたい。


 帰り道、小さな通りにぽつんと喫茶店があった。やれやれ温かいコーヒーにありつける。小さな店内には店主がひとり、客の若者がひとりマンガを読んでいた。久しぶりにドトールではない「喫茶店」に入った気がした。