亀戸線のタコ

亀戸線112号


 夜型人間である。小学校以来遅刻の常習犯。人は歳をとると普通は早起きになるそうだ。でも私に限っては若い時よりも朝が苦手になっている。
 そんな私でも、運動会や遠足の朝のように、いそいそと早起きする日もある。亀戸線の最終鉄塔を亀戸変電所に撮りに行った時もそうだった。


 荒川の右岸は良いサイクリングコースだ。自転車道は土手の上ではなく河原を走っているから土手の外の風景はあまり見えない。この鉄塔は土手の上にぬーっと姿を見せる。それがこの鉄塔とのはじめての出会いだった。
 名前は「亀戸線のタコ」。何本もクネクネと足を延ばして、直線より曲線が主人公。オイお前、本当に鉄塔かよ。


 何度か見ているうちにちゃんと写真を撮ろうと思った。あの鉄塔を撮るなら朝だ。鉄塔は東を向いて立っている、昼過ぎではシルエットになって面白くない。そして次の朝いそいそと早起きをする。亀戸線112号は午前の光の中、鉄塔も碍子も白く輝き、ジャンパー線を優雅に踊らせていた。


 この鉄塔の前に家を建て、112号を眺めながら毎朝モーニング・コーヒーを楽しめたら最高だろうな。もしかして私も朝型人間になれるかも知れない。