美しく青きドナウ

江東線89号


 荒川と中川を隔てる中土手が尽きるところそこが荒川河口である。川はまだ先、湾岸道路の橋まで続いているように見える。でもここが荒川の河口。後は最近の埋め立て地なのだ。
 「荒川河口まで0Km」と書かれた標識の少し手前、荒川の浅瀬の中に1本の鉄塔が立っている。江東線89号だ。


 江東線は千葉県船橋市の奥にある新京葉変電所から90本の鉄塔を連ねやってくる275KVの送電系統だ。東京の23区に乗り入れる送電経路で275KVは珍しい。
 高電圧の送電経路にふさわしく碍子30個を連ね、力強い男性的な鉄塔が多いこの経路だが、最終の荒川に至ってとても優美な姿に生まれ変わる。別名「美しく青きドナウ」だ。


 ドナウ型鉄塔というのは鉄塔の形状による分類である。通常の鉄塔は3つの腕木に1本づつ送電線を支持する。ドナウ型鉄塔では腕木は2本。上部の短い腕木に1本、下部の長く張り出した腕木に2本の送電線を付ける。
 「ドナウ」という名前の元はドナウ川に違いない。ドナウ川クルーズなどのホームページを漁ってみるが残念ながら鉄塔は写っていない。ドナウをわたる鉄塔はどんな形をしているか訪ねて見たいものだ。


 ドナウ鉄塔は腕木が少ない分鉄塔の高さを抑えられるが、腕を張り出した分敷地は多く必要。河川敷だから敷地には困らない。河口の強風を考えれば高さは低いほうが有利ということだろうか。鉄塔観察界には「似た鉄塔は集まる」という格言があるが対岸の90号鉄塔―もう江東変電所の中―も背の少し高いドナウ。荒川河口ではドナウからドナウへと送電線が渡されている。


 鋼材は二等辺山型鋼ではなく鋼管を使用している。鋼管鉄塔というと重量感のある巨大な鉄塔を思い浮かべるが、この鉄塔はとても細身の鋼管を使用しておりスマートな印象を与えている。
 この鉄塔に「美しく青きドナウ」と名付けたのはみそがいさんのサイトに投稿したHisaさんだ。この鉄塔、全体を水色に塗られている。まさに「青き」ドナウなのだ。青い空を背景に水辺に立つ水色のドナウ。とても素敵な1本なのである。



みそがいさんのサイトにはもう一枚の美しく青きドナウもあります。
ヨハンシュトラウス美しく青きドナウはMOMOさんの「山の音楽(MIDI)アルバム」で聞くことができます。http://www.hi-ho.ne.jp/momose/mu_title/utsukusiki_aoki_donau.htm