中土手の鉄塔たち

亀戸線110号


 良い天気に誘われてこの土日は中土手サイクリング。河口まで行ってきた。


 荒川と中川は新小岩の少し上流で出会う。出会うが合流はしない。そこからおよそ7キロ並行して進み東京湾へと注ぐ。その間荒川と中川の間には幅100メートルほどの細長い土手が走っている。通称中土手という。首都高の中環状線がこの中土手を通っているといえばお分かりの人も多いだろう。
 荒川をわたる送電線の中には中土手をパスして一気に2つの川を越えるものもあるが、通常の送電経路はこの中土手に鉄塔を持っている。鉄塔めぐりにはこの中土手に下りなければならない。


 川は鉄塔めぐりのハイライトだが同時に難所でもある。送電線は空高く引き上げられ、大きなカーブを描き対岸へとわたっていく。地べたを這う我々は土手にひとり取り残される。
 送電線と人間はしょせん住む世界が違うのだ。川の向こうをゆうゆうと先に進んでいく送電線。大きな川では橋までとても遠い。大きく迂回をしてまた一緒に進むには時間がない。おあつらえ向きにここいらで夕日が沈む。夕日に照らされる対岸の鉄塔に想いをはせながら再会を約束することになる。


 さて中土手には橋の途中から下りるのだが、すべての橋に下りるスロープがあるわけではない。スロープがある橋を発見しても自動車やバイクは進入出来ないので自転車が頼りだ。だから中土手の鉄塔はどうしても後回しになってしまう。後回しついでに一気に中土手の鉄塔だけを見て回るほうがよい。両岸に立つ鉄塔の眺めもなかなかよい。素敵な鉄塔サイクリングコースだ。


 下り立ってみると中土手はちょっとした別天地。大きな河川の河川敷はたいていグラウンドなどに利用され休日はにぎやかだ。でも中土手には何もない。土手に下りる人も少なく、荒川の川岸は自然も豊富だ。そこをサイクリング道路が一本伸びている。
 中土手に立つ送電鉄塔は上流から、亀戸線110号、船堀橋線5号、葛西橋線20号、江東線89号の4本。みな味のある鉄塔だ。対岸に見える鳥のくちばしのような腕木を持つ亀戸線引き込み鉄塔新小岩の繁華街上空を静かに越えてくる亀戸線鉄塔群、船堀橋線の双子の門番も見える、葛西橋線のノッポさん…、どれも捨てがたいが何といっても河口に立つ江東線89号。こいつはとても素敵な1本だ。
 この鉄塔についてはまた明日。


写真はこの夏訪ねた夕暮れの亀戸線110号。