青葉台の橋本線
数日前にKさんが逝去された。Kさんは私より10歳ほど先輩で、会社も違ったのだが、ある業界の仲間として親しくお付き合いさせてもらっていた。最後にあったのは昨年の春。今年の年賀状もいただいたのだが残念だ。
このKさんから鉄塔の写真をいただいたことがあった。お住まいである青葉台の近くの鉄塔だ。「一緒に鉄塔を見ようよ」と誘われていた。Kさんは別に鉄塔好きというわけではない。でもそんな優しさがあった。
ついに果たせなかったお誘い。それで今日は青葉台にやってきた。
青葉台の駅から西に歩いて行くと丘の上に大きな4回線鉄塔が見えてきた。2連耐張。低い日差しが鉄塔に反射している。
Kさんはとても背が高く、がっちりとした体格の方だった。橋本線の堂々とした姿に少しKさんの姿を重ね合わせてみる。
Kさんはスキューバ・ダイビングの草分けのひとりで、植物にも詳しかった。最近は畑を借りて農業三昧の日々を送られていた。こんなところに住んでいたんだ。自然がまだ多く残る丘を下りながら、Kさんの日常を思い浮かべてみた。
橋本線も大きな農家の敷地を抜け、恩田川の作る低地へと下りていく。
前方に鉄塔がたくさん見えてきた。どうやら送電線の交差点らしい。
暖かな日差しを送ってくれていた太陽が隠れ、夕闇が迫る。1036号の先の公園からは遙かに進んでいく橋本線が遠望できた。
結局、Kさんの見せたかった鉄塔には行き着かなかった。でも今日は穏やかな暖かい一日だった。橋本線、京浜線。すてきな鉄塔にKさんが引き合わせてくれたのかもしれない。成瀬の駅から電車に乗って帰路に着く。