長い腕の青梅線

青梅線36号



 行楽の秋だ。ミーハーの私としては行楽地へ行きたくなった。そこで手頃な奥多摩へ出かけることにした。まだ紅葉には少し早いが別の目的もある。


 都心を抜け中央高速に入る。高井戸のトンネルを抜けるとすぐ左手に鉄塔の林――千歳変電所だ。北堀線、和田堀線の鉄塔、高速の上から見てもなかなか良い。
 中央道が山に入る手前、八王子インターで降りる。東京西線の大きな鉄塔が丘の上からお迎えに来てくれている。ちょっと丘の上までご挨拶。鋼管の大鉄塔。今日の最初の鉄塔は幹線級。幸先がよろしい。


 八王子インターから滝山街道を下る。しばらくするとまた送電線が横切っていた。街道横の深い草むらの中に秋留線17号鉄塔。6万ボルトのごく普通の鉄塔だが鉄塔へ続く小道にはススキの穂が。この辺り「秋川」「秋留」と「秋」が付く地名が多い。「秋留」とてもすてきな地名だ。(でも役人の手にかかると「あきる野市」ってつまらない地名になる。)


 滝山街道が吉野街道に変わる。もう奥多摩の渓谷の入口。すぐに上空を1本の送電線が横切る。左手の山から多摩川を越え右手の山へと渡っている。川の手前に鉄塔があるようだ。街道を逸れ鉄塔へ向かう。


 何やら音楽が聞こえてきた。運動会だ。保育園の運動会らしい。
 運動会ってのは現代の都会でも奇跡的に残っている地域の親睦会だ。特に保育園や幼稚園の運動会は若い夫婦からおじいさんまで一族総出で面白い。ましてここは多摩川と山々に囲まれた集落。とても温かい雰囲気がする。
 運動会が行われている小さな運動場の隣に小さな果実林。栗と梅だろうか。その果実林の中に黒っぽい鉄塔が立っていた。青梅線36号鉄塔。


 40mに満たない鉄塔。大きくとても長い腕金。特に2本目の腕金の長さがとても印象的。3本の腕金は塔長の半分以上を使ってゆったりと付けられている。このプロポーションも何とも素晴らしい!! お気に入り鉄塔がまた1本増えた。
 碍子の数を数えると20個。たぶん27万5000ボルトの幹線級の送電線だ。どこからやって来てどこへ行くのか。今日は別の目的があるから辿れないが、またいつの日か必ずここへやって来ることだろう。


 鉄塔の前の栗の木は実をたくさんつけていた。青い空にイガが緑色に輝いている。次に来るときは紅白の花?それともたわわになった梅の実を見れるのだろうか。


続く