戦中派の小さな鉄柱たち

新丸子線26号

飛んだ帽子続きの続き)

 一月あまりたったある日、相武線を辿り終えた私は新丸子線を辿ろうと武蔵新田へ向かった。線路沿いの送電線だ、どうせ門型鉄塔が続くのだろう、と勝手に決め付け後回しにしていたのだ。


 前回見た風変わりな引き下ろし鉄柱の次は片寄りの鉄柱、そしてその先には案の定、門型鉄塔が続いている。線路はゆるいカーブを描き進む。
 線路沿いの道がないので迂回をしてカーブの先に出る。すると門型鉄塔は途切れ、線路脇に鉄柱が立ち並んでいた。新丸子線22号


 高さは16メートル、電柱よりは高い程度。背は低いが腕金が3段6本ちゃんと伸びている。腕金の長さはとても短い。短いが立派に四角錐をしている。架空地線はない。代わりに棒が1本突き出す。突き出しているのは昇降用のレールだ。
 小振りながら送電鉄塔の要素をすべて備え、鉄道の鉄構とは独立し、送電のためだけに立ち並らぶ小さな鉄柱たち。


 標札を確認するとやはり「昭和14年8月」と書かれている。みんな戦中派の鉄柱たちだ。戦火に耐え60年以上ここで送電線を持って並んで来たんだ。新丸子線18号


 線路沿いに道が通っている。進むと鵜の木の駅。鉄柱の下は商店街になる。
 鉄柱を見上げる。線路側の送電線は腕金の先端にII吊り。道側は耐張型、道の上を避け目一杯内側、腕金の根元に碍子がつけられている。
 送電線は鉄柱に触らないようジャンパー線で腕金の先まで迂回する。周辺の開発でこんな窮屈なつなぎ方になったのだろう。
 そんな苦労の結果のジャンパー線だが、描く曲線はきれいだ。


 やたら人が多い。何やらイベントの最中だったらしい。うなぎ屋の店先に露店が出て、うなぎ弁当を売っていた。これは安い。ひとつ買って近くの公園で食べる。
雨がポツポツ降ってきた。本降りになるのかなぁ。

新丸子線19号


続く