凧鉄塔

新丸子線

飛んだ帽子続き続きの続き)


 2万ボルト2回線の小さな鉄柱は東急多摩川線に沿って行進を続ける。
 もう田園調布も近い。田園調布といえば日本中に知られた高級住宅街だが、東急多摩川線の沿線はとてもきさくな雰囲気の街だ。「高級」なのは丘の上か。


 前方に横須賀線が横断している。ここで行進は終わり、角度鉄塔へと送電線は受け渡される。角度鉄塔の高さは30メートル。そんなに大きな鉄塔ではないが、いままで17メートル程度の鉄柱ばかり見てきた目には、とても高く、頑丈そうに見える。


 新丸子線は90度近く曲げられ多摩川に向かう。堤防手前に7号。2万ボルトとはいえ川越えの鉄塔だ。高さは50メートルほど、背高のっぽの立派な鉄塔だ。
 頂上付近で送電線をちょこんと支えている。小さな腕、3個だけの碍子、何とも可愛らしい。


 堤防に上がり川向こうを眺める。対岸から風変わりな鉄塔がこちらを眺めていた。何だこれ!絶句。新丸子線6号


 腕金がやたら太い、形も三角ではなく四角だ。塔体も太め、頭のとんがり帽子はとてもでかい。形も変わっているがとてもがさが大きな印象。でも不思議に重さは感じない。ふわふわと軽い感じ、立体凧のような印象だ。


 2万ボルトの送電線に用意する鉄塔とはどうしても思えない。3本手前まで高さ16メートルほど腕金の長さも1メートル程度の鉄柱を辿ってきたのだよ。
 川越えだから背が高いのは理解できる。でもこの形は何なんだろう。「似た鉄塔は集まる」という格言もこの鉄塔には当てはまらない。ひとり個性的な姿で空の一角を悠然と占めていた。


 雨は相変わらずシトシトポツポツ。強くなったり弱くなったり梅雨に逆戻りしたようだ。
 送電線がゆるく低く川の上空に垂れている。送電線には鵜だろうか、たくさんの渡り鳥が群れてとまっている。鳥はじっと動かない。こんな日は鳥もお休みなんだろう。




(注・今年の7月末の思い出です 続く